@IDX:21500
@OFF:0xe7
@SPK:
@JPN:　………………。
@ENG:

@IDX:21501
@OFF:0x119
@SPK:
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:21502
@OFF:0x147
@SPK:
@JPN:　……。
@ENG:

@IDX:21503
@OFF:0x1c9
@SPK:
@JPN:　泥のように眠るとは、こんなのを言うのだろう。
@ENG:

@IDX:21504
@OFF:0x205
@SPK:
@JPN:　昨日の夕方、布団に横になってから今日の朝起きる　まで、完全に意識が飛んでしまっている。
@ENG:

@IDX:21505
@OFF:0x26b
@SPK:
@JPN:　普通そんなに長時間寝ていれば、一度ぐらい途中で　目覚めそうなものだが、夜中トイレに起きたような　記憶もない。
@ENG:

@IDX:21506
@OFF:0x2f9
@SPK:
@JPN:　にも関わらず、身体はなおも睡眠を求めている。
@ENG:

@IDX:21507
@OFF:0x335
@SPK:
@JPN:　……身体が求めているのか、それとも精神が、心が　休養を欲しているのか……。
@ENG:

@IDX:21508
@OFF:0x39d
@SPK:
@JPN:　昨日は最悪だった。
@ENG:

@IDX:21509
@OFF:0x3bf
@SPK:
@JPN:　初めての作業……慎重にやるべきなのに手を抜き、　死体を傷つけてしまった。
@ENG:

@IDX:21510
@OFF:0x417
@SPK:
@JPN:　肩の外れる手応えや音は、一晩やそこら寝たくらい　では忘れられない。
@ENG:

@IDX:21511
@OFF:0x469
@SPK:
@JPN:　今も記憶に、しっかりと焼きついている。
@ENG:

@IDX:21512
@OFF:0x4ad
@SPK:
@JPN:　これから先、たとえ慣れてきたとしても、手抜きは　一切しない。
@ENG:

@IDX:21513
@OFF:0x4f9
@SPK:
@JPN:　もしも手を抜いて同じように傷つけてしまったら、　僕は一生立ち直れそうにない。
@ENG:

@IDX:21514
@OFF:0x555
@SPK:
@JPN:　心が罪悪感に押し潰されて、おかしくなってしまう　だろう。
@ENG:

@IDX:21515
@OFF:0x5ab
@SPK:
@JPN:　今日が２回目の死体洗い。
@ENG:

@IDX:21516
@OFF:0x5d3
@SPK:
@JPN:　死体に触れるのも２回目……今日また失敗したら、　今度こそ言い訳はできない。
@ENG:

@IDX:21517
@OFF:0x62d
@SPK:
@JPN:　何としても、無事に洗いきってみせる。
@ENG:

@IDX:21518
@OFF:0x661
@SPK:
@JPN:　昨日失敗したことを活かせないようでは、これから　先は続けていけない。
@ENG:

@IDX:21519
@OFF:0x6c5
@SPK:
@JPN:　第一、死体が嫌だなどと言っていたら医者になんて　なれない。
@ENG:

@IDX:21520
@OFF:0x70f
@SPK:
@JPN:　子供の頃からの夢、ずっと憧れてきた職業。
@ENG:

@IDX:21521
@OFF:0x747
@SPK:
@JPN:　それを、こんなことで諦めるなんてできない。
@ENG:

@IDX:21522
@OFF:0x791
@SPK:
@JPN:　……行こう。
@ENG:

@IDX:21523
@OFF:0x7ad
@SPK:
@JPN:　あそこには、僕の未来が待っている。
@ENG:

@IDX:21524
@OFF:0x7df
@SPK:
@JPN:　絶対に手放したくない……何としても手に入れたい　未来が。
@ENG:

@IDX:21525
@OFF:0x8f6
@SPK:
@JPN:　先に着替えを済ませ、ここで待機する。
@ENG:

@IDX:21526
@OFF:0x92a
@SPK:
@JPN:　すでにもう３度目になる作業着姿……ホルマリンの　においが漂う手袋から昨日の記憶が伝わってくる。　
@ENG:

@IDX:21528
@OFF:0x9f5
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……入ってもよろしいでしょうか？
@ENG:

@IDX:21531
@OFF:0xa4d
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、どうぞ。
@ENG:

@IDX:21533
@OFF:0xb3c
@SPK:［悠紀］
@JPN:　失礼します。仕事の内容を説明しに参りました。
@ENG:

@IDX:21536
@OFF:0xba0
@SPK:[\protag]
@JPN:　……お願いします。
@ENG:

@IDX:21538
@OFF:0xbf7
@SPK:［悠紀］
@JPN:　では……本日は男女各１体、男性の方は腹部に手術痕があると報告がありました。
@ENG:

@IDX:21541
@OFF:0xc79
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうですか……って、今なんて！？
@ENG:

@IDX:21543
@OFF:0xcde
@SPK:［悠紀］
@JPN:　はい？　本日は２体、男性の方は腹部に手術痕があるとの報告が……。
@ENG:

@IDX:21544
@OFF:0xd52
@SPK:
@JPN:　あまりに普通に言われたおかげで、危うく聞き逃す　ところだった。
@ENG:

@IDX:21545
@OFF:0xda0
@SPK:
@JPN:　本日は２体……それは今まで見てきたのと同じ数の　死体を、今日一日で洗えという意味になる。
@ENG:

@IDX:21546
@OFF:0xe08
@SPK:
@JPN:　しかも一人で。
@ENG:

@IDX:21549
@OFF:0xe62
@SPK:[\protag]
@JPN:　ちょ、ちょっと待ってください！　２体って……。
@ENG:

@IDX:21551
@OFF:0xed5
@SPK:［悠紀］
@JPN:　男性１体、女性１体で、計２体です。何か問題でも？
@ENG:

@IDX:21554
@OFF:0xf3d
@SPK:[\protag]
@JPN:　問題でもって……僕、この仕事を始めて２日目なんですよ？　いきなり２体も……。
@ENG:

@IDX:21556
@OFF:0xfce
@SPK:［悠紀］
@JPN:　基本は同じだそうです。『２体洗う』ではなく、『２回洗う』と考えればいい……そう言づけを預かっています。
@ENG:

@IDX:21559
@OFF:0x106c
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも……。
@ENG:

@IDX:21561
@OFF:0x10bb
@SPK:［悠紀］
@JPN:　それから、本日は健康診断を行うそうです。あまり作業が遅くならないよう、気をつけてください。
@ENG:

@IDX:21564
@OFF:0x114d
@SPK:[\protag]
@JPN:　遅くなるなって……そんなこと言われても……確か、健康診断は土日のどちらかって言ってましたよね？　どうして昨日やらなかったんですか？
@ENG:

@IDX:21566
@OFF:0x1214
@SPK:［悠紀］
@JPN:　昨日は、副院長先生の都合が悪かったそうです。
@ENG:

@IDX:21569
@OFF:0x1278
@SPK:[\protag]
@JPN:　じゃ、じゃあ……せめて今日の仕事を……。
@ENG:

@IDX:21571
@OFF:0x12e5
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……申し訳ありませんが、スケジュールなどもありますので、やっていただくしかありません。
@ENG:

@IDX:21574
@OFF:0x1373
@SPK:[\protag]
@JPN:　そ、そんな……。
@ENG:

@IDX:21576
@OFF:0x13c8
@SPK:［悠紀］
@JPN:　それと、これは仕事と直接関係ないのですが……昨日シャワーを浴びましたか？
@ENG:

@IDX:21579
@OFF:0x1448
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　あ、あの……部屋で浴びましたけど、それが何か？
@ENG:

@IDX:21581
@OFF:0x14c1
@SPK:［悠紀］
@JPN:　申し訳ありませんが、作業のあとそちらのシャワー室で浴びてから帰ってください。昨日『ロビーで薬品のにおいがする』と、患者さんから苦情がありましたから。
@ENG:

@IDX:21584
@OFF:0x158d
@SPK:[\protag]
@JPN:　……分かりました。
@ENG:

@IDX:21586
@OFF:0x15e4
@SPK:［悠紀］
@JPN:　私は、これで失礼します。頑張ってください。
@ENG:

@IDX:21587
@OFF:0x1660
@SPK:
@JPN:　頑張ってください……何とも空々しい台詞。
@ENG:

@IDX:21588
@OFF:0x1698
@SPK:
@JPN:　そんな言葉をかけられても、現実には何もプラスに　ならない。
@ENG:

@IDX:21589
@OFF:0x16e2
@SPK:
@JPN:　死体洗い２度目にして、２体も洗わされる。
@ENG:

@IDX:21590
@OFF:0x171a
@SPK:
@JPN:　その現実の前にあっては、彼女の言葉は励ましにも　ならない。
@ENG:

@IDX:21591
@OFF:0x1772
@SPK:
@JPN:　……だが御堂さんの言うように、やるしかないのも　避けようのない事実だ。
@ENG:

@IDX:21592
@OFF:0x17c8
@SPK:
@JPN:　どんなに泣き言を並べても、助けてくれる人は誰も　いない。
@ENG:

@IDX:21593
@OFF:0x1810
@SPK:
@JPN:　僕が、この手で、終わらせるしかない。
@ENG:

@IDX:21594
@OFF:0x1844
@SPK:
@JPN:　それもまた現実。
@ENG:

@IDX:21595
@OFF:0x187c
@SPK:
@JPN:　……やるしかない。
@ENG:

@IDX:21596
@OFF:0x189e
@SPK:
@JPN:　できるできないは、やってから考えればいい。
@ENG:

@IDX:21597
@OFF:0x18d8
@SPK:
@JPN:　まずは、何も考えずに進もう……。
@ENG:

@IDX:21598
@OFF:0x19d5
@SPK:
@JPN:　……本当に、２体ある……。
@ENG:

@IDX:21599
@OFF:0x19ff
@SPK:
@JPN:　ホルマリンの底に沈む寄り添った影……間違いなく　２体見える。
@ENG:

@IDX:21600
@OFF:0x1a59
@SPK:
@JPN:　２体洗うのではなく、２回洗うと考える……。
@ENG:

@IDX:21601
@OFF:0x1a93
@SPK:
@JPN:　だがそれですら自信はない。
@ENG:

@IDX:21602
@OFF:0x1abd
@SPK:
@JPN:　すでに床の水洗いを終え、引き上げる準備は整えて　ある。
@ENG:

@IDX:21603
@OFF:0x1b03
@SPK:
@JPN:　ここに２体もの死体が横たわる……考えただけで、　濡れて光る床がおぞましいものに思えてしまう。
@ENG:

@IDX:21604
@OFF:0x1b7f
@SPK:
@JPN:　……そんなことはない。
@ENG:

@IDX:21605
@OFF:0x1ba5
@SPK:
@JPN:　死体は、おぞましいものでも何でもない。
@ENG:

@IDX:21606
@OFF:0x1bdb
@SPK:
@JPN:　ましてや、僕が相手にしているのは、医学の発展の　ために献体された遺体だ。
@ENG:

@IDX:21607
@OFF:0x1c33
@SPK:
@JPN:　気味悪く思うなんて、医者になる資格はない。
@ENG:

@IDX:21608
@OFF:0x1c7d
@SPK:
@JPN:　先に浮かび上がってきたのは、女性の遺体。
@ENG:

@IDX:21609
@OFF:0x1cb5
@SPK:
@JPN:　抱えなければ、また肩を外してしまう。
@ENG:

@IDX:21610
@OFF:0x1ce9
@SPK:
@JPN:　手応え、鈍く響く音……あんな経験をもう一度する　くらいなら、抱えた方がマシだ。
@ENG:

@IDX:21611
@OFF:0x1d47
@SPK:
@JPN:　……昨日はそう思った。
@ENG:

@IDX:21612
@OFF:0x1d7b
@SPK:
@JPN:　だが、身体が動いてくれない。
@ENG:

@IDX:21613
@OFF:0x1da7
@SPK:
@JPN:　昨日はあれほど嫌な思いをしたのに、まだ逃げ道を　探している。
@ENG:

@IDX:21614
@OFF:0x1df3
@SPK:
@JPN:　抱えずに、肩を外さずに、死体を引き上げる方法は　ないか？
@ENG:

@IDX:21615
@OFF:0x1e3b
@SPK:
@JPN:　気を抜けば、そんなことばかり考えてしまう。
@ENG:

@IDX:21616
@OFF:0x1e85
@SPK:
@JPN:　……どうして素直に抱えられない？
@ENG:

@IDX:21617
@OFF:0x1eb5
@SPK:
@JPN:　今日もまた、同じ失敗を繰り返そうと言うのか？
@ENG:

@IDX:21618
@OFF:0x1ef1
@SPK:
@JPN:　何のために、こんなことをしている？
@ENG:

@IDX:21619
@OFF:0x1f23
@SPK:
@JPN:　情けない……あまりにも不甲斐ない自分に対して、　怒りすら覚える。
@ENG:

@IDX:21620
@OFF:0x1f83
@SPK:
@JPN:　僕は、医者になるためにここにいる。
@ENG:

@IDX:21621
@OFF:0x1fb5
@SPK:
@JPN:　これ以上の理由は必要ない。
@ENG:

@IDX:21622
@OFF:0x1fdf
@SPK:
@JPN:　金がなくても諦めきれなかった道……こんなことで　諦めてなるものか。
@ENG:

@IDX:21623
@OFF:0x20b9
@SPK:
@JPN:　死体の脇の下に腕を入れ、上体を抱え起こすように　引き上げる。
@ENG:

@IDX:21624
@OFF:0x2105
@SPK:
@JPN:　腕に当たる乳房の、重く柔らかい感触。
@ENG:

@IDX:21625
@OFF:0x2139
@SPK:
@JPN:　一歩進むごとにフルフルと揺れ、そのたびに、腕に　伝わる重さが変化する。
@ENG:

@IDX:21626
@OFF:0x219f
@SPK:
@JPN:　これが、女性の乳房の感触。
@ENG:

@IDX:21627
@OFF:0x21c9
@SPK:
@JPN:　これまで何度も揉みしだくのを夢想しながら、まだ　想像だけに止まっていた感触。
@ENG:

@IDX:21628
@OFF:0x2225
@SPK:
@JPN:　少し手をずらすだけで、それが掌に収まる。
@ENG:

@IDX:21629
@OFF:0x225d
@SPK:
@JPN:　思いのままに揉み、好きなだけ感触を堪能できる。　
@ENG:

@IDX:21630
@OFF:0x22ab
@SPK:
@JPN:　だが、それが何だと言うのか？
@ENG:

@IDX:21631
@OFF:0x22d7
@SPK:
@JPN:　腕の中でうなだれているのは、紛れもなく死体。
@ENG:

@IDX:21632
@OFF:0x2313
@SPK:
@JPN:　一昨日のような心理状態には陥らない。
@ENG:

@IDX:21633
@OFF:0x2347
@SPK:
@JPN:　すでに僕の頭は理解し始めている。死体の胸は死体　の胸。生きた女性の胸とは全く別のもの。
@ENG:

@IDX:21634
@OFF:0x23ad
@SPK:
@JPN:　そんな死体の胸など、揉みたいとも思わない。
@ENG:

@IDX:21635
@OFF:0x2467
@SPK:
@JPN:　やればできるじゃないか……。
@ENG:

@IDX:21636
@OFF:0x2493
@SPK:
@JPN:　両腕で抱えた死体を部屋の中央まで運ぶと、そっと　床に降ろす。
@ENG:

@IDX:21637
@OFF:0x24df
@SPK:
@JPN:　仰向けに横たわる死体はどこも傷ついていない。
@ENG:

@IDX:21638
@OFF:0x251b
@SPK:
@JPN:　僕も、やればできる……どうしようもなく情けない　人間に思えた自分が、今は誇らしく思える。
@ENG:

@IDX:21639
@OFF:0x2593
@SPK:
@JPN:　後は洗うだけ。
@ENG:

@IDX:21640
@OFF:0x25b1
@SPK:
@JPN:　ここで傷つけてしまったら、この手で抱えたことが　無意味になってしまう。
@ENG:

@IDX:21641
@OFF:0x2607
@SPK:
@JPN:　慎重に、丁寧に……デッキブラシとタワシを手に、　死体を洗い始める。
@ENG:

@IDX:21642
@OFF:0x2705
@SPK:
@JPN:　フルフルと、ブラシの動きに従って揺れる乳房。
@ENG:

@IDX:21643
@OFF:0x2741
@SPK:
@JPN:　揉みたいとは思わないが、ペッティングの経験すら　ない自分がこんなことをしてると思うと、自虐的な　気分になってくる。
@ENG:

@IDX:21644
@OFF:0x27c3
@SPK:
@JPN:　直接触れたことのない乳房を、デッキブラシで擦る　なんて……僕の乳房初体験がこんなことになるとは　夢にも思わなかった。
@ENG:

@IDX:21645
@OFF:0x2857
@SPK:
@JPN:　だが、これが僕の仕事。
@ENG:

@IDX:21646
@OFF:0x287d
@SPK:
@JPN:　童貞だろうが何だろうが、洗うのに支障はない。
@ENG:

@IDX:21647
@OFF:0x28b9
@SPK:
@JPN:　問題があるとすれば、僕自身の気持ちだけだ。
@ENG:

@IDX:21648
@OFF:0x28f3
@SPK:
@JPN:　それこそ、考え方次第だろう。
@ENG:

@IDX:21649
@OFF:0x292d
@SPK:
@JPN:　いよいよ乳房そのものを洗う。
@ENG:

@IDX:21650
@OFF:0x2959
@SPK:
@JPN:　女性の象徴の上にデッキブラシを当て、ゆっくりと　小刻みに動かしていく。
@ENG:

@IDX:21651
@OFF:0x29af
@SPK:
@JPN:　彼女が生きていれば、激しく抵抗するであろう……　洗ってるだけなのに、あたかも蹂躙しているように　すら思える。
@ENG:

@IDX:21652
@OFF:0x2a3b
@SPK:
@JPN:　当然、そんなことをされても彼女は抵抗しない。
@ENG:

@IDX:21653
@OFF:0x2a77
@SPK:
@JPN:　こんな風に扱われると知っていたら、献体登録など　しなかっただろう。
@ENG:

@IDX:21654
@OFF:0x2ac9
@SPK:
@JPN:　……少なくとも、僕は絶対に嫌だ。
@ENG:

@IDX:21655
@OFF:0x2b09
@SPK:
@JPN:　そんなことを考えていたら仕事がつらくなるだけだ　……その言葉の意味がようやく分かり始めた。
@ENG:

@IDX:21656
@OFF:0x2b73
@SPK:
@JPN:　自分がされたら嫌なことを、死体に対してやる。
@ENG:

@IDX:21657
@OFF:0x2baf
@SPK:
@JPN:　感情移入していては、洗うことはできない。
@ENG:

@IDX:21658
@OFF:0x2bf9
@SPK:
@JPN:　きれいに洗うのが、彼女に対する供養。
@ENG:

@IDX:21659
@OFF:0x2c2d
@SPK:
@JPN:　たとえ嫌でも、そう考えて洗うしかない。
@ENG:

@IDX:21660
@OFF:0x2c63
@SPK:
@JPN:　そう……それしかないんだ。
@ENG:

@IDX:21661
@OFF:0x2d76
@SPK:
@JPN:　ようやく、前面の広い部分が洗い終わった。
@ENG:

@IDX:21662
@OFF:0x2dae
@SPK:
@JPN:　細かい部分も、顔から手まではなんなく洗えた。
@ENG:

@IDX:21663
@OFF:0x2dea
@SPK:
@JPN:　後は……股間だ。
@ENG:

@IDX:21664
@OFF:0x2e1c
@SPK:
@JPN:　死体の足下に跪き、膝に手をかける。
@ENG:

@IDX:21665
@OFF:0x2e4e
@SPK:
@JPN:　一昨日の記憶が蘇り、僅かな逡巡がその動きを止め　させた。
@ENG:

@IDX:21666
@OFF:0x2ea6
@SPK:
@JPN:　あの時はどうかしていたのだ。
@ENG:

@IDX:21667
@OFF:0x2ed2
@SPK:
@JPN:　初めて目にした女性器が、僕の持つ倫理観にヒビを　入れてしまったのだ。
@ENG:

@IDX:21668
@OFF:0x2f26
@SPK:
@JPN:　今はもう大丈夫だ。
@ENG:

@IDX:21669
@OFF:0x2f48
@SPK:
@JPN:　もうあんな妄想に捕らわれたりはしない。
@ENG:

@IDX:21670
@OFF:0x2f8c
@SPK:
@JPN:　それに、僕はあの妄想に対して妙な興奮を覚えたり　はしなかった。
@ENG:

@IDX:21671
@OFF:0x2fda
@SPK:
@JPN:　覚えたのは強い嫌悪感。
@ENG:

@IDX:21672
@OFF:0x3000
@SPK:
@JPN:　大丈夫だ。
@ENG:

@IDX:21673
@OFF:0x301a
@SPK:
@JPN:　僕は正常だ。
@ENG:

@IDX:21674
@OFF:0x3036
@SPK:
@JPN:　もう死体の女性器を見てもなんともないはずだ。
@ENG:

@IDX:21675
@OFF:0x30f2
@SPK:
@JPN:　脚を大開きにさせ、太ももの間に身体を進める。
@ENG:

@IDX:21676
@OFF:0x312e
@SPK:
@JPN:　眼前に晒された局部、ほんの少し進めば互いの腰が　触れ合うほどの距離。
@ENG:

@IDX:21677
@OFF:0x3192
@SPK:
@JPN:　だが僕の中には、何の情動もない。
@ENG:

@IDX:21678
@OFF:0x31c2
@SPK:
@JPN:　興奮も欲情も何もない。
@ENG:

@IDX:21679
@OFF:0x31e8
@SPK:
@JPN:　あるのはただ、死体の局部を洗うという乾いた認識　だけ。
@ENG:

@IDX:21680
@OFF:0x322e
@SPK:
@JPN:　他には何もない。
@ENG:

@IDX:21681
@OFF:0x3300
@SPK:
@JPN:　目の前でうっすらと綻ぶ割れ目に向かい、タワシを　持つ手を伸ばしていく。
@ENG:

@IDX:21682
@OFF:0x3356
@SPK:
@JPN:　柔らかい丘を、硬いタワシの毛が滑る。
@ENG:

@IDX:21683
@OFF:0x338a
@SPK:
@JPN:　手を動かすたび、ホルマリンまみれの割れ目が僅か　に口を開ける。
@ENG:

@IDX:21684
@OFF:0x33e8
@SPK:
@JPN:　それら全てを目に映しながら、何の感慨もないまま　作業を進めていく。
@ENG:

@IDX:21685
@OFF:0x343a
@SPK:
@JPN:　感じるのは、ただ憐憫のみ……。
@ENG:

@IDX:21686
@OFF:0x3468
@SPK:
@JPN:　見ず知らずの男の前で、こんなポーズを取らされる　彼女が可哀想でならない。
@ENG:

@IDX:21687
@OFF:0x35a3
@SPK:
@JPN:　脚を元通りに閉じ、水で全体を軽く流して、身体の　半分が洗い終わる。
@ENG:

@IDX:21688
@OFF:0x35f5
@SPK:
@JPN:　あとは死体をひっくり返して、背中を洗うだけ。
@ENG:

@IDX:21689
@OFF:0x3631
@SPK:
@JPN:　それで、１体目が終わりになる。
@ENG:

@IDX:21690
@OFF:0x366f
@SPK:
@JPN:　だがその後、まだ２体目が控えている。
@ENG:

@IDX:21691
@OFF:0x36a3
@SPK:
@JPN:　まだ引き上げてすらいない、男性の死体が。
@ENG:

@IDX:21692
@OFF:0x36db
@SPK:
@JPN:　今日は２体……忘れかけてた事実が、疲れた身体に　重くのしかかってくる。
@ENG:

@IDX:21693
@OFF:0x3741
@SPK:
@JPN:　……今はできる限り目の前の死体に集中しよう。
@ENG:

@IDX:21694
@OFF:0x377d
@SPK:
@JPN:　引き上げてすらいないもののことを考えても、疲れ　が酷くなるだけだ。
@ENG:

@IDX:21695
@OFF:0x37cf
@SPK:
@JPN:　まずはこいつを終わらせてしまおう……。
@ENG:

@IDX:21696
@OFF:0x38c2
@SPK:
@JPN:　……あと１体。
@ENG:

@IDX:21697
@OFF:0x38e0
@SPK:
@JPN:　洗い終えた死体から離れ、部屋の隅で呟く。
@ENG:

@IDX:21698
@OFF:0x3918
@SPK:
@JPN:　１体目を終えた勢いで、もう１体……そんな期待を　していた自分が、妙に間抜けに思えてしまう。
@ENG:

@IDX:21699
@OFF:0x3982
@SPK:
@JPN:　実際には、身体中が酷くダルく、勢いなんてものは　どこにもない。
@ENG:

@IDX:21700
@OFF:0x39e0
@SPK:
@JPN:　なぜこんなに疲れるのか、理由は分からない。
@ENG:

@IDX:21701
@OFF:0x3a1a
@SPK:
@JPN:　ただ引き上げて洗うだけ……死体を抱える以外に、　力を使う作業もない。
@ENG:

@IDX:21702
@OFF:0x3a6e
@SPK:
@JPN:　だが理由はどうあれ、疲れているのは事実だ。
@ENG:

@IDX:21703
@OFF:0x3aa8
@SPK:
@JPN:　こんな状態で、２体目に取りかかれるのか？
@ENG:

@IDX:21704
@OFF:0x3af4
@SPK:
@JPN:２体目に取りかかる前に、少し休もう
@ENG:

@IDX:21705
@OFF:0x3b1d
@SPK:
@JPN:さっさと洗って、早く終わらせてしまおう
@ENG:

@IDX:21706
@OFF:0x3b86
@SPK:
@JPN:　そうだ。
@ENG:

@IDX:21707
@OFF:0x3b9e
@SPK:
@JPN:　このまま続けてもうまくいくとは思えない。
@ENG:

@IDX:21708
@OFF:0x3bd6
@SPK:
@JPN:　ひんやりと冷たい壁に背中を預けて、フウとため息　をつく。
@ENG:

@IDX:21709
@OFF:0x3c1e
@SPK:
@JPN:　ぼんやりとした頭で部屋の中を眺める。
@ENG:

@IDX:21710
@OFF:0x3c60
@SPK:
@JPN:　ユラユラと揺れる液面。
@ENG:

@IDX:21711
@OFF:0x3c86
@SPK:
@JPN:　１体目を引き上げた時に起きた波が、まだ残ってい　るようだ。
@ENG:

@IDX:21712
@OFF:0x3cd0
@SPK:
@JPN:　うっすらともう１体の影が見える。
@ENG:

@IDX:21713
@OFF:0x3d00
@SPK:
@JPN:　休んでる最中は死体のことは忘れていたい。
@ENG:

@IDX:21714
@OFF:0x3d38
@SPK:
@JPN:　そう思って目を逸らしても、目の前で横たわる洗い　終わった死体がどうしても視界に入ってしまう。
@ENG:

@IDX:21715
@OFF:0x3db6
@SPK:
@JPN:　いつまでも、あんなものを見続けるのは精神衛生上　いいようには思えない。
@ENG:

@IDX:21716
@OFF:0x3e0c
@SPK:
@JPN:　どうにかアレを見ないで済む方法はないだろうか。　
@ENG:

@IDX:21717
@OFF:0x3e5c
@SPK:
@JPN:　そう考えた時、天啓のようにある考えが、頭の中で　閃いた。
@ENG:

@IDX:21718
@OFF:0x3ea4
@SPK:
@JPN:　そうだ！　洗い終わっているんだから、鏑木さんに　引き取ってもらえばいいんだ。
@ENG:

@IDX:21719
@OFF:0x3f12
@SPK:
@JPN:　『２体』ではなく『２回』洗う。
@ENG:

@IDX:21720
@OFF:0x3f40
@SPK:
@JPN:　つまりはそういうことだったのかもしれない。
@ENG:

@IDX:21721
@OFF:0x3f8c
@SPK:
@JPN:　インターフォンで、鏑木さんに１体目を洗い終えた　ことを伝え、再び壁に寄りかかり、短い休息を堪能　する。
@ENG:

@IDX:21722
@OFF:0x401c
@SPK:
@JPN:　…
@ENG:

@IDX:21723
@OFF:0x402c
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21724
@OFF:0x403a
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21725
@OFF:0x4048
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21726
@OFF:0x4056
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21727
@OFF:0x4064
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21728
@OFF:0x4072
@SPK:
@JPN:。
@ENG:

@IDX:21730
@OFF:0x4143
@SPK:［鏑木］
@JPN:　よう、引き取りに来たぞ。
@ENG:

@IDX:21733
@OFF:0x4193
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい。お疲れ様です……。
@ENG:

@IDX:21735
@OFF:0x426e
@SPK:［鏑木］
@JPN:　何だ？　女から先に洗ったのか？　まあ、順番までとやかく口出しはしないが……楽しみは、後に取っておいた方がいいんじゃないか？
@ENG:

@IDX:21738
@OFF:0x4320
@SPK:[\protag]
@JPN:　そんなこと、考えてる余裕なんてありませんよ……先に上がってきたのが女性だった、ただそれだけのことです。
@ENG:

@IDX:21740
@OFF:0x43cb
@SPK:［鏑木］
@JPN:　まあ何にせよ洗えてれば問題はない。
@ENG:

@IDX:21741
@OFF:0x4429
@SPK:
@JPN:　そう言って確認作業に取りかかった。
@ENG:

@IDX:21742
@OFF:0x445b
@SPK:
@JPN:　『洗えてれば問題はない』か……。
@ENG:

@IDX:21743
@OFF:0x448b
@SPK:
@JPN:　どこか超然とした雰囲気の鏑木さんには、その台詞　がしっくりとはまっているように思えた。
@ENG:

@IDX:21744
@OFF:0x44f1
@SPK:
@JPN:　彼にとっては、僕がこの仕事で感じている苦悩など　瑣末なことに過ぎないのだろう。
@ENG:

@IDX:21745
@OFF:0x454f
@SPK:
@JPN:　結果に問題がない限り、その過程には大した意味が　ないということか……。
@ENG:

@IDX:21746
@OFF:0x45a5
@SPK:
@JPN:　そんなことを考えているうちに、鏑木さんは確認を　終えていた。
@ENG:

@IDX:21749
@OFF:0x4693
@SPK:[\protag]
@JPN:　……どうでした？
@ENG:

@IDX:21751
@OFF:0x46e8
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、問題ない。きれいに洗えている。
@ENG:

@IDX:21754
@OFF:0x4744
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうですか。良かった。
@ENG:

@IDX:21756
@OFF:0x479f
@SPK:［鏑木］
@JPN:　それじゃ、俺はアレを片づけちまうからな。あと１体、ご苦労だがよろしく頼むぞ。
@ENG:

@IDX:21759
@OFF:0x4823
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。分かりました。
@ENG:

@IDX:21761
@OFF:0x48a6
@SPK:［鏑木］
@JPN:　……っと、そうだ。
@ENG:

@IDX:21764
@OFF:0x495c
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　どうかしましたか？
@ENG:

@IDX:21766
@OFF:0x49b9
@SPK:［鏑木］
@JPN:　もう１体の方に傷があるって聞いてるよな？
@ENG:

@IDX:21769
@OFF:0x4a19
@SPK:[\protag]
@JPN:　え、ええ。聞いてますけど……それが何か？
@ENG:

@IDX:21771
@OFF:0x4a86
@SPK:［鏑木］
@JPN:　いや、聞いてればいいんだ。一応確認までにな。
@ENG:

@IDX:21774
@OFF:0x4aea
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうですか。気を遣わせちゃってすみません。
@ENG:

@IDX:21776
@OFF:0x4b59
@SPK:［鏑木］
@JPN:　なに、気にするな。それじゃあ、またあとでな。
@ENG:

@IDX:21779
@OFF:0x4bbd
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。
@ENG:

@IDX:21780
@OFF:0x4c15
@SPK:
@JPN:　１体目の女性の死体と一緒に、洗い場から鏑木さん　は去っていった。
@ENG:

@IDX:21781
@OFF:0x4c65
@SPK:
@JPN:　もう１体の死体についている傷の話。
@ENG:

@IDX:21782
@OFF:0x4c97
@SPK:
@JPN:　はっきり言って忘れていた。
@ENG:

@IDX:21783
@OFF:0x4cc1
@SPK:
@JPN:　もし鏑木さんが確認してくれなければ失敗していた　かもしれない。
@ENG:

@IDX:21784
@OFF:0x4d0f
@SPK:
@JPN:　……助かった。
@ENG:

@IDX:21785
@OFF:0x4d3d
@SPK:
@JPN:　安堵のため息をついた後に大きく伸びをして、膝を　パンと平手で叩く。
@ENG:

@IDX:21786
@OFF:0x4d8f
@SPK:
@JPN:　さあ、もう休憩は終わりだ。
@ENG:

@IDX:21787
@OFF:0x4db9
@SPK:
@JPN:　２体目の作業に移ろう。
@ENG:

@IDX:21788
@OFF:0x4e45
@SPK:
@JPN:　微かに波の残る液面に、再び棒を差し込んだ。
@ENG:

@IDX:21789
@OFF:0x4e7f
@SPK:
@JPN:　水底に潜む人影を一突きする。
@ENG:

@IDX:21790
@OFF:0x4eab
@SPK:
@JPN:　棒を引き抜いてしばし待つと、ゆっくり男の死体が　浮かび上がってくる。
@ENG:

@IDX:21791
@OFF:0x4f0f
@SPK:
@JPN:　棒を脇に差し込みジワジワと岸に引き寄せる。
@ENG:

@IDX:21792
@OFF:0x4f49
@SPK:
@JPN:　死体が岸に達すると、ズッという軽い衝撃が、棒を　通して手に伝わってきた。
@ENG:

@IDX:21793
@OFF:0x4fa1
@SPK:
@JPN:　棚に棒を戻して、死体の引き上げにかかる。
@ENG:

@IDX:21794
@OFF:0x4feb
@SPK:
@JPN:　ユラユラと穏やかな波に洗われている男の死体を、　背後から抱きかかえる。
@ENG:

@IDX:21795
@OFF:0x5041
@SPK:
@JPN:　ゆっくりと後ずさり、部屋の中央に横たえる。
@ENG:

@IDX:21796
@OFF:0x50ff
@SPK:
@JPN:　足下に横臥する男性の死体……その腹部には確かに　生々しい傷痕がある。
@ENG:

@IDX:21797
@OFF:0x5153
@SPK:
@JPN:　よくよく見れば、ようやく抜糸が終わったばかりの　傷……。
@ENG:

@IDX:21798
@OFF:0x519b
@SPK:
@JPN:　強く擦れば、容易く口を開けそうに見える。
@ENG:

@IDX:21799
@OFF:0x51e3
@SPK:
@JPN:　さっきの鏑木さんの確認がなければ、忘れたままで　強く擦ってしまっていたかもしれない。
@ENG:

@IDX:21800
@OFF:0x5247
@SPK:
@JPN:　そんなことをすれば、どうなるか……。
@ENG:

@IDX:21801
@OFF:0x527b
@SPK:
@JPN:　おそらく傷口が開いてしまう……もしかすると傷口　をさらに広げてしまうかもしれない。
@ENG:

@IDX:21802
@OFF:0x52ed
@SPK:
@JPN:　死体を眺めながらホッと胸を撫で下ろす。
@ENG:

@IDX:21803
@OFF:0x5323
@SPK:
@JPN:　本当に確認してくれて良かった。
@ENG:

@IDX:21804
@OFF:0x5351
@SPK:
@JPN:　ちゃんと気をつけてさえいれば、さすがの僕でも、　そうそう失敗はしない。
@ENG:

@IDX:21805
@OFF:0x53a7
@SPK:
@JPN:　傷口に充分注意を払って死体を洗い始める。
@ENG:

@IDX:21806
@OFF:0x5401
@SPK:
@JPN:　…
@ENG:

@IDX:21807
@OFF:0x5411
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21808
@OFF:0x541f
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21809
@OFF:0x542d
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21810
@OFF:0x543b
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21811
@OFF:0x5449
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21812
@OFF:0x5457
@SPK:
@JPN:。
@ENG:

@IDX:21813
@OFF:0x5495
@SPK:
@JPN:　…
@ENG:

@IDX:21814
@OFF:0x54a5
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21815
@OFF:0x54b3
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21816
@OFF:0x54c1
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21817
@OFF:0x54cf
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21818
@OFF:0x54dd
@SPK:
@JPN:…
@ENG:

@IDX:21819
@OFF:0x54eb
@SPK:
@JPN:。
@ENG:

@IDX:21820
@OFF:0x551b
@SPK:
@JPN:　……手を洗い終えたところでいったん立ち上がり、　腰を後ろに反らす。
@ENG:

@IDX:21821
@OFF:0x556d
@SPK:
@JPN:　バキバキという音と共に、腰が伸びていく。
@ENG:

@IDX:21822
@OFF:0x55a5
@SPK:
@JPN:　まだ終わったわけではないが、ほんの一瞬解放感の　ようなものを覚える。
@ENG:

@IDX:21823
@OFF:0x5607
@SPK:
@JPN:　必要以上の時間をかけ、何とか傷を開かせることも　なく胴体は終わった。
@ENG:

@IDX:21824
@OFF:0x565b
@SPK:
@JPN:　顔も手も洗い終わった。
@ENG:

@IDX:21825
@OFF:0x5681
@SPK:
@JPN:　次は……脚の間。
@ENG:

@IDX:21826
@OFF:0x56a1
@SPK:
@JPN:　女性を洗う時と同様、死体の脚を開かせてその間に　身体を進める。
@ENG:

@IDX:21827
@OFF:0x576d
@SPK:
@JPN:　男性も女性同様、タワシで擦ればいい。
@ENG:

@IDX:21828
@OFF:0x57a1
@SPK:
@JPN:　昨日は直前に肩を外したせいか、気にする余裕すら　なく陰部も洗ってしまった。
@ENG:

@IDX:21829
@OFF:0x57fb
@SPK:
@JPN:　だが眼前に晒されたグロテスクな物体は、死体だと　分かっていてもタワシで擦るのを躊躇してしまう。　
@ENG:

@IDX:21830
@OFF:0x587b
@SPK:
@JPN:　もちろん、死体は痛みなど感じない。
@ENG:

@IDX:21831
@OFF:0x58ad
@SPK:
@JPN:　痛みを感じるように思えるのは、それが人間の姿を　しているからに過ぎない。
@ENG:

@IDX:21832
@OFF:0x5905
@SPK:
@JPN:　それでも、もし自分が同じことをされたらと思うと　思わず股間を押さえずにはいられない。
@ENG:

@IDX:21833
@OFF:0x5979
@SPK:
@JPN:　だが洗うしかない。
@ENG:

@IDX:21834
@OFF:0x599b
@SPK:
@JPN:　同じ男として同情を禁じ得ないが、ここにいる以上　諦めてもらうしかない。
@ENG:

@IDX:21835
@OFF:0x59f1
@SPK:
@JPN:　左手で亀頭をつまみ、陰茎をタワシで擦る。
@ENG:

@IDX:21836
@OFF:0x5ad5
@SPK:
@JPN:　毛先でくすぐるように陰茎を擦り、亀頭も同じ様に　して洗う。
@ENG:

@IDX:21837
@OFF:0x5b1f
@SPK:
@JPN:　……ここにも、傷痕がある。
@ENG:

@IDX:21838
@OFF:0x5b49
@SPK:
@JPN:　亀頭の根本を囲むように盛り上がった傷痕。
@ENG:

@IDX:21839
@OFF:0x5b81
@SPK:
@JPN:　これは……おそらく……そういうことだろう。
@ENG:

@IDX:21840
@OFF:0x5bbb
@SPK:
@JPN:　……念のため、慎重に擦っておく。
@ENG:

@IDX:21841
@OFF:0x5bf9
@SPK:
@JPN:　次いで陰嚢からその周辺までを洗う。
@ENG:

@IDX:21842
@OFF:0x5c2b
@SPK:
@JPN:　骨も筋肉もなく、ただぶらりと垂れ下がってるだけ　の部分。
@ENG:

@IDX:21843
@OFF:0x5c73
@SPK:
@JPN:　タワシの動きに合わせてブラブラとだらしなく揺れ　会陰に当たってペチペチと情けない音を立てる。
@ENG:

@IDX:21844
@OFF:0x5cdf
@SPK:
@JPN:　僕のモノも、こうなってしまうのか？
@ENG:

@IDX:21845
@OFF:0x5d11
@SPK:
@JPN:　そう思うと、男であることが情けなく思えてくる。　
@ENG:

@IDX:21846
@OFF:0x5dd5
@SPK:
@JPN:　最後の一擦りを終え、タワシを股間から離す。
@ENG:

@IDX:21847
@OFF:0x5e0f
@SPK:
@JPN:　おそらく、女性の倍は時間がかかっただろう。
@ENG:

@IDX:21848
@OFF:0x5e49
@SPK:
@JPN:　それくらい洗いにくかった。
@ENG:

@IDX:21849
@OFF:0x5e83
@SPK:
@JPN:　だがその分、きれいに洗えた自信はある。
@ENG:

@IDX:21850
@OFF:0x5eb9
@SPK:
@JPN:　構造を知り尽くした部分だからこそ、細かい部分も　ピカピカに洗えた。
@ENG:

@IDX:21851
@OFF:0x5f0b
@SPK:
@JPN:　……ここは、これで充分だろう。
@ENG:

@IDX:21852
@OFF:0x5fa3
@SPK:
@JPN:　前面が終われば、今度は背面。
@ENG:

@IDX:21853
@OFF:0x5fcf
@SPK:
@JPN:　だが背面には、さほど時間はかかりそうにない。
@ENG:

@IDX:21854
@OFF:0x600b
@SPK:
@JPN:　前面と違って傷はなく、股間のように複雑な部位も　ない。
@ENG:

@IDX:21855
@OFF:0x6051
@SPK:
@JPN:　デッキブラシで洗えるという鏑木さんの言葉にも、　容易に頷けた。
@ENG:

@IDX:21857
@OFF:0x61fd
@SPK:［鏑木］
@JPN:　随分のんびりだったな？
@ENG:

@IDX:21860
@OFF:0x624b
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。傷を開かせちゃいけないと思って……。
@ENG:

@IDX:21862
@OFF:0x62ba
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、そうか……そう言えばソレがあったんだったな……で、どんな風に洗ったんだ？
@ENG:

@IDX:21865
@OFF:0x6340
@SPK:[\protag]
@JPN:　えっと、タワシで表面を撫でるように……。
@ENG:

@IDX:21867
@OFF:0x63ad
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そうか、やっぱりな……。
@ENG:

@IDX:21870
@OFF:0x63fd
@SPK:[\protag]
@JPN:　やっぱりってどういうことですか？
@ENG:

@IDX:21872
@OFF:0x6462
@SPK:［鏑木］
@JPN:　あー、なんだ……そのな……傷を洗う時に有効なテクニックがあるんだよ。
@ENG:

@IDX:21875
@OFF:0x64de
@SPK:[\protag]
@JPN:　テクニック？
@ENG:

@IDX:21877
@OFF:0x652f
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、傷と平行にブラシを動かすと、開きにくいんだ。
@ENG:

@IDX:21880
@OFF:0x6599
@SPK:[\protag]
@JPN:　そ、そうだったんですか？
@ENG:

@IDX:21882
@OFF:0x65f6
@SPK:［鏑木］
@JPN:　……先に教えてやればよかったな。
@ENG:

@IDX:21885
@OFF:0x664e
@SPK:[\protag]
@JPN:　そう……ですね、できればそうして欲しかったです。
@ENG:

@IDX:21887
@OFF:0x66c3
@SPK:［鏑木］
@JPN:　まあ、丁寧に洗ったんならその方がいいし、次に機会があったら試してみろ。
@ENG:

@IDX:21890
@OFF:0x6741
@SPK:[\protag]
@JPN:　はあ……そうします。
@ENG:

@IDX:21892
@OFF:0x679a
@SPK:［鏑木］
@JPN:　それより、今日はそんなに顔色が悪くないな。慣れたのか？
@ENG:

@IDX:21895
@OFF:0x6808
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ、まだ全然……昨日よりは幾分楽ですけど。
@ENG:

@IDX:21897
@OFF:0x687b
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そうか……まあ気長にやれ。そのうち慣れるだろう。
@ENG:

@IDX:21900
@OFF:0x68e3
@SPK:[\protag]
@JPN:　だといいんですが……。
@ENG:

@IDX:21902
@OFF:0x693e
@SPK:［鏑木］
@JPN:　あまり悲観的になるな。まだ始まったばかりなんだぞ？　もっと気楽にいかんと、身体がもたん。
@ENG:

@IDX:21905
@OFF:0x69ce
@SPK:[\protag]
@JPN:　……そうですね、気をつけます。
@ENG:

@IDX:21907
@OFF:0x6a31
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、そうした方がいい。今日はもういいから上がれ。
@ENG:

@IDX:21910
@OFF:0x6a9b
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　いいんですか？　確認がまだなんじゃ……。
@ENG:

@IDX:21912
@OFF:0x6b0e
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ずいぶん丁寧に洗ったみたいだからな、たぶん大丈夫だろう。それに、今日は健康診断なんじゃないか？　外で看護婦が待ってたぞ。
@ENG:

@IDX:21915
@OFF:0x6bbe
@SPK:[\protag]
@JPN:　あっ！　そう言えば……じゃ、じゃあ、僕はこれで……。
@ENG:

@IDX:21917
@OFF:0x6c37
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、また明日な。
@ENG:

@IDX:21918
@OFF:0x6c9e
@SPK:
@JPN:　そうだ。
@ENG:

@IDX:21919
@OFF:0x6cb6
@SPK:
@JPN:　休むなら、全てを終えてからの方がいい。
@ENG:

@IDX:21920
@OFF:0x6cec
@SPK:
@JPN:　こんなところで一息入れても息がつまるだけだ。
@ENG:

@IDX:21921
@OFF:0x6d28
@SPK:
@JPN:　身体に残った疲れが多少気になるが、動けないほど　ではない。
@ENG:

@IDX:21922
@OFF:0x6d72
@SPK:
@JPN:　さっさと２体目を洗って、作業を終わらせよう。
@ENG:

@IDX:21923
@OFF:0x6e12
@SPK:
@JPN:　プールには、１体目を引き上げた時に起きた波が、　まだ残っている。
@ENG:

@IDX:21924
@OFF:0x6e62
@SPK:
@JPN:　ユラユラと揺れる液面を透かして、もう１体の影が　見える。
@ENG:

@IDX:21925
@OFF:0x6eaa
@SPK:
@JPN:　まるで、死体が動いているようだ。
@ENG:

@IDX:21926
@OFF:0x6eda
@SPK:
@JPN:　クラゲのように漂う死体の影……シルエットでしか　見えないだけに、余計な想像をかき立てる。
@ENG:

@IDX:21927
@OFF:0x6f54
@SPK:
@JPN:　……こんな想像なんかにつき合ってる暇はない。
@ENG:

@IDX:21928
@OFF:0x6f90
@SPK:
@JPN:　さっさと作業をしてしまおう。
@ENG:

@IDX:21929
@OFF:0x6fcc
@SPK:
@JPN:　水底の死体めがけて棒を突き入れる。
@ENG:

@IDX:21930
@OFF:0x6ffe
@SPK:
@JPN:　手に戻ってくる柔らかな感触。
@ENG:

@IDX:21931
@OFF:0x702a
@SPK:
@JPN:　そのまま軽く突く。
@ENG:

@IDX:21932
@OFF:0x704c
@SPK:
@JPN:　ユラッと影が蠢いて徐々に人影が鮮明になる。
@ENG:

@IDX:21933
@OFF:0x7086
@SPK:
@JPN:　液面を割って男の姿が現れる。
@ENG:

@IDX:21934
@OFF:0x70c4
@SPK:
@JPN:　無防備な脇の下に棒を差し込み、手前に引く。
@ENG:

@IDX:21935
@OFF:0x70fe
@SPK:
@JPN:　ゆっくりと僕の足下に向かって泳いでくる。
@ENG:

@IDX:21936
@OFF:0x7148
@SPK:
@JPN:　トンと軽い衝撃が岸に着いたことを知らせる。
@ENG:

@IDX:21937
@OFF:0x7182
@SPK:
@JPN:　男性を背後から抱え上げ、部屋の中央へ運ぶ。
@ENG:

@IDX:21938
@OFF:0x7224
@SPK:
@JPN:　……引き上げる作業は順調に進む。
@ENG:

@IDX:21939
@OFF:0x7254
@SPK:
@JPN:　抱える時のためらいすら感じなかった。
@ENG:

@IDX:21940
@OFF:0x7298
@SPK:
@JPN:　悩みすぎて、頭がおかしくなってしまったのか？
@ENG:

@IDX:21941
@OFF:0x72d4
@SPK:
@JPN:　それとも、慣れてきたのだろうか？
@ENG:

@IDX:21942
@OFF:0x7304
@SPK:
@JPN:　……正直、どちらが正解かは分からない。
@ENG:

@IDX:21943
@OFF:0x733a
@SPK:
@JPN:　だがどちらにしても重要なのは、悩まずに済むこと　……それだけだ。
@ENG:

@IDX:21944
@OFF:0x7398
@SPK:
@JPN:　後ずさる足が何かに引っかかる。
@ENG:

@IDX:21945
@OFF:0x73c6
@SPK:
@JPN:　あやうく死体を抱えたまま、ひっくり返ってしまい　そうになった。
@ENG:

@IDX:21946
@OFF:0x7414
@SPK:
@JPN:　悪態をつきながら頭を巡らせ、引っかかったものが　何か確かめる。
@ENG:

@IDX:21947
@OFF:0x7462
@SPK:
@JPN:　僕の足下には、先程洗い終えた女性の死体が静かに　横たわっていた。
@ENG:

@IDX:21948
@OFF:0x74c2
@SPK:
@JPN:　……このままじゃ、２体目が洗えない。
@ENG:

@IDX:21949
@OFF:0x74f6
@SPK:
@JPN:　死体を抱えたまま、しばし固まってしまう。
@ENG:

@IDX:21950
@OFF:0x752e
@SPK:
@JPN:　……仕方ない。いったんこっちを下ろして、むこう　を片づけよう。
@ENG:

@IDX:21951
@OFF:0x75fe
@SPK:
@JPN:　男性の死体を、すでに洗い終えた女性の死体の脇に　下ろす。
@ENG:

@IDX:21952
@OFF:0x7646
@SPK:
@JPN:　床の上に並んだ２つの死体。
@ENG:

@IDX:21953
@OFF:0x7670
@SPK:
@JPN:　片や天井を仰ぎ、片や地に臥した男女。
@ENG:

@IDX:21954
@OFF:0x76a4
@SPK:
@JPN:　意図せぬ性別の違いから、仲のいいカップルにさえ　見える。
@ENG:

@IDX:21955
@OFF:0x76fc
@SPK:
@JPN:　こんな姿を見ると、２人……いや２体を引き離すの　にためらいを覚えてしまう。
@ENG:

@IDX:21956
@OFF:0x7756
@SPK:
@JPN:　しかし、そんな場違いなことを考えたのは、ほんの　一瞬だけ。
@ENG:

@IDX:21957
@OFF:0x77a0
@SPK:
@JPN:　現実は、物言わぬ冷たい死体が並んでいるだけだ。　
@ENG:

@IDX:21958
@OFF:0x77ee
@SPK:
@JPN:　フウと一つため息をつく。
@ENG:

@IDX:21959
@OFF:0x7816
@SPK:
@JPN:　洗い終えたのはまだ１体。
@ENG:

@IDX:21960
@OFF:0x783e
@SPK:
@JPN:　この男性の遺体はまだ洗い終わっていない。
@ENG:

@IDX:21961
@OFF:0x7876
@SPK:
@JPN:　一度に２体の遺体を洗うのは、想像していた以上に　きつい作業だ。
@ENG:

@IDX:21962
@OFF:0x78c4
@SPK:
@JPN:　しっかり気合を入れていないと、頭がボーッとして　きてしまう。
@ENG:

@IDX:21963
@OFF:0x7920
@SPK:
@JPN:　……ええい。死体を見下ろして、ぼんやりしている　場合ではない。
@ENG:

@IDX:21964
@OFF:0x796e
@SPK:
@JPN:　休むのならば作業が終わってからだ。
@ENG:

@IDX:21965
@OFF:0x79a0
@SPK:
@JPN:　……さっさと片づけよう。
@ENG:

@IDX:21966
@OFF:0x7a34
@SPK:
@JPN:　先に洗い終わっていた女性の死体を抱えて、壁際に　運ぶ。
@ENG:

@IDX:21967
@OFF:0x7a7a
@SPK:
@JPN:　ここなら作業に支障はないだろう。
@ENG:

@IDX:21968
@OFF:0x7aaa
@SPK:
@JPN:　そっと、傷つけないように丁寧に横たえる。
@ENG:

@IDX:21969
@OFF:0x7af0
@SPK:
@JPN:　足下に女性の死体を下ろしてから気づいた。
@ENG:

@IDX:21970
@OFF:0x7b28
@SPK:
@JPN:　男性の死体を、この女性のすぐ脇に置いたのは失敗　だったかもしれない。
@ENG:

@IDX:21971
@OFF:0x7b7c
@SPK:
@JPN:　もしかすると、ホルマリンがついてしまったかもし　れない。
@ENG:

@IDX:21972
@OFF:0x7bc4
@SPK:
@JPN:　仕方なく、ため息をつきながらホースで水をかけ、　ブラシで軽く擦る。
@ENG:

@IDX:21973
@OFF:0x7c26
@SPK:
@JPN:　時間も手間もあまりかけなかったが、このくらいで　おそらく大丈夫だろう。
@ENG:

@IDX:21974
@OFF:0x7c7c
@SPK:
@JPN:　よし、これで２体目の作業に移れる。
@ENG:

@IDX:21975
@OFF:0x7cae
@SPK:
@JPN:　ブラシとタワシを手に、部屋の中央で横たわる男性　の下に戻った。
@ENG:

@IDX:21976
@OFF:0x7d7e
@SPK:
@JPN:　残るは足下に横たわる死体１体のみ。
@ENG:

@IDX:21977
@OFF:0x7db0
@SPK:
@JPN:　よく見ると、腹部に手術痕がある。
@ENG:

@IDX:21978
@OFF:0x7de0
@SPK:
@JPN:　そう言えば、御堂さんがミーティングでそんなこと　を言っていたような気がする。
@ENG:

@IDX:21979
@OFF:0x7e3c
@SPK:
@JPN:　まだ真新しい傷に見えるが、ここに来た以上、問題　はないのだろう。
@ENG:

@IDX:21980
@OFF:0x7e9c
@SPK:
@JPN:　ホースから流れ出る水を、死体にかけていく。
@ENG:

@IDX:21981
@OFF:0x7ed6
@SPK:
@JPN:　これを終わらせれば、ゆっくりと休める。
@ENG:

@IDX:21982
@OFF:0x7f0c
@SPK:
@JPN:　呟きながらホースを手放し、デッキブラシで死体を　擦り始めた。
@ENG:

@IDX:21983
@OFF:0x7f6e
@SPK:
@JPN:　作業は簡単だ……初日に聞いた鏑木さんの言葉が、　脳裏に蘇る。
@ENG:

@IDX:21984
@OFF:0x7fba
@SPK:
@JPN:　確かに技術的な部分だけを見れば、驚くほど簡単な　作業だ。
@ENG:

@IDX:21985
@OFF:0x8002
@SPK:
@JPN:　傷つけてはいけないという制約も、それほど大きな　枷にはならない。
@ENG:

@IDX:21986
@OFF:0x8064
@SPK:
@JPN:　だがそれは、心理的な部分を忘れた場合の話だ。
@ENG:

@IDX:21987
@OFF:0x80a0
@SPK:
@JPN:　これほど簡単な仕事を、難しくしてるもの……。
@ENG:

@IDX:21988
@OFF:0x80dc
@SPK:
@JPN:　それは、死体から受ける心理的圧迫に他ならない。　
@ENG:

@IDX:21989
@OFF:0x812c
@SPK:
@JPN:　そして今は、目の前にあるものだけではない。
@ENG:

@IDX:21990
@OFF:0x8166
@SPK:
@JPN:　部屋の隅に追いやった死体までもが、僅かな気配を　こちらに伝えてくる。
@ENG:

@IDX:21991
@OFF:0x81ba
@SPK:
@JPN:　２体同時に洗わされる気分……。
@ENG:

@IDX:21992
@OFF:0x81e8
@SPK:
@JPN:　これはもう、考え方でどうこうなる状況ではない。　
@ENG:

@IDX:21993
@OFF:0x8238
@SPK:
@JPN:　心理的なプレッシャーのせいか、身体に感じる疲れ　が、段々酷くなってくる。
@ENG:

@IDX:21994
@OFF:0x8290
@SPK:
@JPN:　身体のコントロールがうまく取れない。
@ENG:

@IDX:21995
@OFF:0x82c4
@SPK:
@JPN:　頭がフラフラして、足下が定まらない。
@ENG:

@IDX:21996
@OFF:0x82f8
@SPK:
@JPN:　自分の身体が、自分のものではないように感じる。　
@ENG:

@IDX:21997
@OFF:0x83b3
@SPK:
@JPN:　その時、僅かに手元が狂った。
@ENG:

@IDX:21998
@OFF:0x83df
@SPK:
@JPN:　一際大きな擦過音が、室内の時間を止めた。
@ENG:

@IDX:21999
@OFF:0x8417
@SPK:
@JPN:　それまで、意図的に避けていた傷の上に、ブラシの　先端が重なっている。
@ENG:

@IDX:22000
@OFF:0x8485
@SPK:
@JPN:　抜糸の終わった傷がそう簡単に開くはずはない。
@ENG:

@IDX:22001
@OFF:0x84c1
@SPK:
@JPN:　御堂さんも、そんなことは言ってなかった。
@ENG:

@IDX:22002
@OFF:0x84f9
@SPK:
@JPN:　ならば……ブラシの影に見え隠れするのは何だ？
@ENG:

@IDX:22003
@OFF:0x85c5
@SPK:
@JPN:　死体の腹部に、長さ８センチほどの裂け目ができて　いる。
@ENG:

@IDX:22004
@OFF:0x860b
@SPK:
@JPN:　鋭い刃物で切られたような滑らかな切り口。
@ENG:

@IDX:22005
@OFF:0x8643
@SPK:
@JPN:　おそらく腹腔内にまで達している。
@ENG:

@IDX:22006
@OFF:0x8673
@SPK:
@JPN:　僅かに盛り上がったふちの下に、薄い皮膚と脂肪の　層が覗く。
@ENG:

@IDX:22007
@OFF:0x86cd
@SPK:
@JPN:　場所は手術痕があったところと同じ。
@ENG:

@IDX:22008
@OFF:0x86ff
@SPK:
@JPN:　長さも、全く同じ。
@ENG:

@IDX:22009
@OFF:0x8721
@SPK:
@JPN:　周囲には、他に傷痕らしきものは見当たらない。
@ENG:

@IDX:22010
@OFF:0x875d
@SPK:
@JPN:　開いてしまったのだ……傷口が。
@ENG:

@IDX:22011
@OFF:0x8799
@SPK:
@JPN:　すでに死んでるからか、本来大量にあるはずの出血　は全くない。
@ENG:

@IDX:22012
@OFF:0x87e5
@SPK:
@JPN:　まるで洗われたようにきれいな傷口。
@ENG:

@IDX:22013
@OFF:0x8817
@SPK:
@JPN:　いや、実際に洗ってしまったのだが、それはこの際　問題ではない。
@ENG:

@IDX:22014
@OFF:0x8865
@SPK:
@JPN:　奇妙なほどに美しすぎるその傷口が、この出来事の　現実感を異常に乏しくしている。
@ENG:

@IDX:22015
@OFF:0x88d5
@SPK:
@JPN:　だがそこにあるのは、紛れもない現実。
@ENG:

@IDX:22016
@OFF:0x8909
@SPK:
@JPN:　……僕が犯した失敗の証。
@ENG:

@IDX:22017
@OFF:0x8931
@SPK:
@JPN:　……僕が開かせてしまった傷口。
@ENG:

@IDX:22018
@OFF:0x896f
@SPK:
@JPN:　ほんの一瞬の気の緩み……。
@ENG:

@IDX:22019
@OFF:0x8999
@SPK:
@JPN:　それだけであっさりと開いた傷口……。
@ENG:

@IDX:22020
@OFF:0x89cd
@SPK:
@JPN:　僕がつけた傷じゃない……。
@ENG:

@IDX:22021
@OFF:0x89f7
@SPK:
@JPN:　僕は何もしてない……。
@ENG:

@IDX:22022
@OFF:0x8a1d
@SPK:
@JPN:　……だがこの状態にしたのは僕だ。
@ENG:

@IDX:22023
@OFF:0x8a5b
@SPK:
@JPN:　鏑木さんを呼ぶか？
@ENG:

@IDX:22024
@OFF:0x8a7d
@SPK:
@JPN:　だが、呼んでどうなるというのだ。
@ENG:

@IDX:22025
@OFF:0x8aad
@SPK:
@JPN:　脱臼とは違い、簡単に治せるとも思えない。
@ENG:

@IDX:22026
@OFF:0x8ae5
@SPK:
@JPN:　或いは、洗わなくても良くなるかもしれない。
@ENG:

@IDX:22027
@OFF:0x8b1f
@SPK:
@JPN:　しかし、そううまくいくだろうか？
@ENG:

@IDX:22028
@OFF:0x8b4f
@SPK:
@JPN:　かと言って、このままでは洗えない……。
@ENG:

@IDX:22029
@OFF:0x8b9b
@SPK:
@JPN:　凍りついた時間が、ようやく動き始めた。
@ENG:

@IDX:22030
@OFF:0x8bd1
@SPK:
@JPN:　……鏑木さんを呼ぶ。
@ENG:

@IDX:22031
@OFF:0x8bf5
@SPK:
@JPN:　彼なら、きっと何とかしてくれる。
@ENG:

@IDX:22032
@OFF:0x8c25
@SPK:
@JPN:　こんな時に頼れるのは彼だけなのだから……。
@ENG:

@IDX:22034
@OFF:0x8dd5
@SPK:［鏑木］
@JPN:　……またか？　今度は傷口が開いたとか言ってたな？
@ENG:

@IDX:22037
@OFF:0x8e3d
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい……申し訳、ありません……。
@ENG:

@IDX:22039
@OFF:0x8ea2
@SPK:［鏑木］
@JPN:　俺に謝ってもしょうがないだろ……まあいい、とにかく見せてもらおうか。
@ENG:

@IDX:22042
@OFF:0x8f1e
@SPK:[\protag]
@JPN:　お願いします……。
@ENG:

@IDX:22043
@OFF:0x8f72
@SPK:
@JPN:　不機嫌な顔をして死体の側へと歩み寄る。
@ENG:

@IDX:22044
@OFF:0x8fa8
@SPK:
@JPN:　ブツブツと呟きながら、傷口に視線を落とす。
@ENG:

@IDX:22045
@OFF:0x8fe2
@SPK:
@JPN:　その表情が苦々しげなのは、続けて死体を傷つけた　からだろうか？
@ENG:

@IDX:22046
@OFF:0x903e
@SPK:
@JPN:　だが、僕にはどうしようもなかった。
@ENG:

@IDX:22047
@OFF:0x9070
@SPK:
@JPN:　抜糸も終わった傷が、あの程度で開くのか？
@ENG:

@IDX:22048
@OFF:0x90a8
@SPK:
@JPN:　あの程度で開いてしまう傷なら、なぜそうと言って　くれなかった？
@ENG:

@IDX:22049
@OFF:0x90f6
@SPK:
@JPN:　そのためのミーティングではないのか？
@ENG:

@IDX:22050
@OFF:0x912a
@SPK:
@JPN:　手術痕があると言われただけでは、予想のしようが　ない。
@ENG:

@IDX:22052
@OFF:0x921f
@SPK:［鏑木］
@JPN:　……ああ見事に開いてると、何とも言いようがないな。
@ENG:

@IDX:22055
@OFF:0x9289
@SPK:[\protag]
@JPN:　すみません……。
@ENG:

@IDX:22057
@OFF:0x92de
@SPK:［鏑木］
@JPN:　だから、俺に謝ってもしょうがないだろ？　とにかく、残りの作業を進めてくれ。
@ENG:

@IDX:22060
@OFF:0x9360
@SPK:[\protag]
@JPN:　残りのって……洗うんですか？
@ENG:

@IDX:22062
@OFF:0x943b
@SPK:［鏑木］
@JPN:　当たり前だろ？　腹膜の癒着は済んでるから、内臓がはみ出るなんてことはない。洗ったあとに縫合すれば、それなりに格好はつくはずだ。
@ENG:

@IDX:22065
@OFF:0x94f1
@SPK:[\protag]
@JPN:　け、けど、あんなのをどうやって洗えば……。
@ENG:

@IDX:22067
@OFF:0x9560
@SPK:［鏑木］
@JPN:　どうやってって、普通に洗えるだろ。傷口を大きくしないように注意するだけで、あとはいつも通りだ。
@ENG:

@IDX:22070
@OFF:0x95f6
@SPK:[\protag]
@JPN:　で、でも……。
@ENG:

@IDX:22072
@OFF:0x9649
@SPK:［鏑木］
@JPN:　代わりに洗ってやってもいいが、そうなるとお前さんはただの役立たずってことになる。
@ENG:

@IDX:22075
@OFF:0x96d1
@SPK:[\protag]
@JPN:　役……立たず……。
@ENG:

@IDX:22077
@OFF:0x9728
@SPK:［鏑木］
@JPN:　傷を開いちまったのはお前のミスだ。汚名返上のチャンスだと思って、しっかり洗うんだな。
@ENG:

@IDX:22078
@OFF:0x97cc
@SPK:
@JPN:　鏑木さんは、僕の反論なんぞ聞く耳持たずといった　態度で、踵を返した。
@ENG:

@IDX:22079
@OFF:0x9820
@SPK:
@JPN:　そのまま振り向きもせず、不機嫌さも露わに部屋を　出ていく。
@ENG:

@IDX:22080
@OFF:0x986a
@SPK:
@JPN:　当然、死体をこの場に残したまま。
@ENG:

@IDX:22081
@OFF:0x98a8
@SPK:
@JPN:　こうなってしまった以上、洗うしかないだろう。
@ENG:

@IDX:22082
@OFF:0x98e4
@SPK:
@JPN:　確かに鏑木さんの言うように、傷口さえ注意すれば　残りの部分は普通に洗えそうだ。
@ENG:

@IDX:22083
@OFF:0x9942
@SPK:
@JPN:　だが、できれば傷口を直視したくない。
@ENG:

@IDX:22084
@OFF:0x9976
@SPK:
@JPN:　僕の失敗の明らかな証拠としてそこに存在している　ように見えるから……。
@ENG:

@IDX:22085
@OFF:0x99de
@SPK:
@JPN:　頭の中で傷口を見ないで洗う方法が模索される。
@ENG:

@IDX:22086
@OFF:0x9a1a
@SPK:
@JPN:　顔をざっと水洗いで済ませて、あとは裏返してから　洗えば……。
@ENG:

@IDX:22087
@OFF:0x9a74
@SPK:
@JPN:　心の中でもう一人の僕が叫ぶ。
@ENG:

@IDX:22088
@OFF:0x9aa0
@SPK:
@JPN:　こんなのただの逃げじゃないか。
@ENG:

@IDX:22089
@OFF:0x9ace
@SPK:
@JPN:　昨日の脱臼で懲りたはずなのに、また楽することを　考えるのか？
@ENG:

@IDX:22090
@OFF:0x9b1a
@SPK:
@JPN:　逃げてばかりじゃ前に進めない。
@ENG:

@IDX:22091
@OFF:0x9b48
@SPK:
@JPN:　失敗を認めないと……。
@ENG:

@IDX:22092
@OFF:0x9bf4
@SPK:
@JPN:　その声に応えて、もう一度傷口を確認する。
@ENG:

@IDX:22093
@OFF:0x9c2c
@SPK:
@JPN:　僕が開けてしまった傷。
@ENG:

@IDX:22094
@OFF:0x9c52
@SPK:
@JPN:　出血もなく、ただそこにあるだけの傷。
@ENG:

@IDX:22095
@OFF:0x9c86
@SPK:
@JPN:　僕の罪の証……。
@ENG:

@IDX:22096
@OFF:0x9cb6
@SPK:
@JPN:　胸がキューッと締め上げられる。
@ENG:

@IDX:22097
@OFF:0x9ce4
@SPK:
@JPN:　心が悲鳴を上げる。
@ENG:

@IDX:22098
@OFF:0x9d06
@SPK:
@JPN:　見たくない！
@ENG:

@IDX:22099
@OFF:0x9d22
@SPK:
@JPN:　こんなもの見たくない！
@ENG:

@IDX:22100
@OFF:0x9d5a
@SPK:
@JPN:　いいじゃないか、逃げたって。
@ENG:

@IDX:22101
@OFF:0x9d86
@SPK:
@JPN:　いいじゃないか、失敗から目を逸らしたって。
@ENG:

@IDX:22102
@OFF:0x9dc0
@SPK:
@JPN:　いいじゃないか、楽をしたって。
@ENG:

@IDX:22103
@OFF:0x9e5a
@SPK:
@JPN:　僕は傷から目を逸らして、ホースを手に取る。
@ENG:

@IDX:22104
@OFF:0x9e94
@SPK:
@JPN:　頭の中で構築された、傷を直接見ないで洗うための　プラン。
@ENG:

@IDX:22105
@OFF:0x9edc
@SPK:
@JPN:　それを実行に移すために。
@ENG:

@IDX:22107
@OFF:0xa050
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ざっと見せてもらったが、特に問題はなかった……腹の傷以外はな。
@ENG:

@IDX:22110
@OFF:0xa0c6
@SPK:[\protag]
@JPN:　……すみませんでした。
@ENG:

@IDX:22112
@OFF:0xa19b
@SPK:［鏑木］
@JPN:　しかし、分からん奴だな……。あれだけ丁寧に洗えるんなら、最初からそうすればいいだろう？　そうすれば、こちらも余計なことで怒らなくて済む。
@ENG:

@IDX:22115
@OFF:0xa25b
@SPK:[\protag]
@JPN:　すみません……。
@ENG:

@IDX:22117
@OFF:0xa2b0
@SPK:［鏑木］
@JPN:　反省してるならいい……今日はもう行っていいぞ。
@ENG:

@IDX:22120
@OFF:0xa316
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい……お疲れ様でした……。
@ENG:

@IDX:22122
@OFF:0xa377
@SPK:［鏑木］
@JPN:　おっと、そう言えば看護婦が待ってたぞ。今日は健康診断なんだろ？
@ENG:

@IDX:22125
@OFF:0xa3ed
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　ああ、確かそんなことを言われた気がします。じゃあ、急がないといけませんね。
@ENG:

@IDX:22127
@OFF:0xa482
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ああ、そうしろ。じゃあまた明日な。
@ENG:

@IDX:22128
@OFF:0xa591
@SPK:
@JPN:　鏑木さんは看護婦が待っていると言っていた。
@ENG:

@IDX:22129
@OFF:0xa5cb
@SPK:
@JPN:　おそらく御堂さんのことだろう。
@ENG:

@IDX:22130
@OFF:0xa5f9
@SPK:
@JPN:　だがドアの前はもちろん、辺りを見回しても彼女の　姿はない。
@ENG:

@IDX:22131
@OFF:0xa643
@SPK:
@JPN:　何か緊急の用事でもできたのか？
@ENG:

@IDX:22133
@OFF:0xa732
@SPK:［鏑木］
@JPN:　どうしたんだ？　こんなところでボーッとしてるような時間はないだろ？
@ENG:

@IDX:22136
@OFF:0xa7ac
@SPK:[\protag]
@JPN:　えっと……御堂さん、待ってたんですよね？
@ENG:

@IDX:22138
@OFF:0xa819
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そうだ。会わなかったのか？
@ENG:

@IDX:22141
@OFF:0xa86b
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ。僕が出てきた時は誰もいませんでした。
@ENG:

@IDX:22143
@OFF:0xa8da
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そうか……それなら先に着替えるんだな。なに、どうせトイレにでも行ってるんだろ。すぐに戻ってくるさ。
@ENG:

@IDX:22146
@OFF:0xa974
@SPK:[\protag]
@JPN:　……そうですね。着替えながら待つことにします。
@ENG:

@IDX:22148
@OFF:0xa9e7
@SPK:［鏑木］
@JPN:　じゃあ俺はもう行く。彼女に会ったら、お前は更衣室にいると伝えておいてやる。
@ENG:

@IDX:22151
@OFF:0xaa69
@SPK:[\protag]
@JPN:　お願いします。
@ENG:

@IDX:22152
@OFF:0xab57
@SPK:
@JPN:　シャワーの温度をぬるめにして、汗を流す。
@ENG:

@IDX:22153
@OFF:0xab8f
@SPK:
@JPN:　緊張で凝り固まった肩や腰を、ぬるめの湯が優しく　ほぐしてくれる。
@ENG:

@IDX:22154
@OFF:0xabed
@SPK:
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:22155
@OFF:0xac07
@SPK:
@JPN:　『薬品のにおいがする』か……。
@ENG:

@IDX:22156
@OFF:0xac35
@SPK:
@JPN:　腕のにおいを嗅いでみるが、さすがに自分ではよく　分からない。
@ENG:

@IDX:22157
@OFF:0xac81
@SPK:
@JPN:　今までそのにおいの中にいたせいで嗅覚が麻痺して　いるのだろうか……。
@ENG:

@IDX:22158
@OFF:0xace3
@SPK:
@JPN:　だが、身体は洗えそうになかった。
@ENG:

@IDX:22159
@OFF:0xad13
@SPK:
@JPN:　入浴用具は持ってきていないし、備えつけの石鹸も　あるにはあるのだが、黒ずんだ上にひび割れていて　どうも使う気にはなれない。
@ENG:

@IDX:22160
@OFF:0xad9d
@SPK:
@JPN:　仕方なく、手で全身を満遍なく擦って洗い流す。
@ENG:

@IDX:22161
@OFF:0xadd9
@SPK:
@JPN:　……明日からは、風呂用具一式を持ってくることに　しよう。
@ENG:

@IDX:22162
@OFF:0xaef2
@SPK:
@JPN:　充分に湯を浴びてから更衣室に戻った。
@ENG:

@IDX:22163
@OFF:0xaf26
@SPK:
@JPN:　備えつけのペーパータオルで身体を拭いて、下着を　身に着けていく。
@ENG:

@IDX:22164
@OFF:0xaf76
@SPK:
@JPN:　鏑木さんに言われたように、予定ではこのあと健康　診断が入っている。
@ENG:

@IDX:22165
@OFF:0xafc8
@SPK:
@JPN:　落としきれなかった水滴が気持ち悪いが、背に腹は　代えられない。
@ENG:

@IDX:22166
@OFF:0xb016
@SPK:
@JPN:　御堂さんが遅れているのは気になるが、のんびりと　着替える時間はないだろう。
@ENG:

@IDX:22169
@OFF:0xb0ba
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい、どなたですか？
@ENG:

@IDX:22171
@OFF:0xb113
@SPK:［悠紀］
@JPN:　御堂です……入ってもよろしいでしょうか？
@ENG:

@IDX:22174
@OFF:0xb173
@SPK:[\protag]
@JPN:　み、御堂さん！？　ちょちょ、ちょっと待ってください！
@ENG:

@IDX:22175
@OFF:0xb1dd
@SPK:
@JPN:　こんな不恰好な下着姿、御堂さんの前に晒すわけに　いかない。
@ENG:

@IDX:22176
@OFF:0xb227
@SPK:
@JPN:　ドタバタと慌てながら、ズボンを身に着ける。
@ENG:

@IDX:22179
@OFF:0xb29d
@SPK:[\protag]
@JPN:　もういいですよ、どうぞ。
@ENG:

@IDX:22181
@OFF:0xb2fa
@SPK:［悠紀］
@JPN:　はい、失礼します。
@ENG:

@IDX:22183
@OFF:0xb3e9
@SPK:［悠紀］
@JPN:　お待たせして申し訳ありません。
@ENG:

@IDX:22186
@OFF:0xb43f
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、構いませんが……何かあったんですか？
@ENG:

@IDX:22188
@OFF:0xb4ae
@SPK:［悠紀］
@JPN:　大したことでは……それより報告書をお願いできますか？
@ENG:

@IDX:22189
@OFF:0xb518
@SPK:
@JPN:　どこへ行っていたのだろう？
@ENG:

@IDX:22190
@OFF:0xb542
@SPK:
@JPN:　今日の作業結果を報告書に書き込みながら御堂さん　の顔を覗き見るが、表情からは何も読み取れない。　
@ENG:

@IDX:22193
@OFF:0xb5ee
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい、どうぞ。
@ENG:

@IDX:22195
@OFF:0xb64c
@SPK:［悠紀］
@JPN:　拝見します……今日は何も問題なかったようですね。明日からも、この調子で頑張ってください。
@ENG:

@IDX:22198
@OFF:0xb6dc
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。
@ENG:

@IDX:22200
@OFF:0xb737
@SPK:［悠紀］
@JPN:　拝見します……あら？　『傷口を開いた』というのは……？
@ENG:

@IDX:22203
@OFF:0xb7a5
@SPK:[\protag]
@JPN:　男性の死体にあった手術痕を開いてしまったんです……ごめんなさい、せっかく教えてもらったのに……。
@ENG:

@IDX:22205
@OFF:0xb84a
@SPK:［悠紀］
@JPN:　いえ、私は構いませんが……問題はなかったのですか？
@ENG:

@IDX:22208
@OFF:0xb8b4
@SPK:[\protag]
@JPN:　鏑木さんはあとで縫合すれば問題ないだろうと言ってましたが……。
@ENG:

@IDX:22210
@OFF:0xb937
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そうですか……。次からは気をつけてください。
@ENG:

@IDX:22213
@OFF:0xb99b
@SPK:[\protag]
@JPN:　分かりました……。
@ENG:

@IDX:22215
@OFF:0xb9f2
@SPK:［悠紀］
@JPN:　では、私は報告書を提出して参りますので……。
@ENG:

@IDX:22218
@OFF:0xba80
@SPK:[\protag]
@JPN:　あっ！　ちょっと待ってください！
@ENG:

@IDX:22220
@OFF:0xbb51
@SPK:［悠紀］
@JPN:　はい、なんでしょう？
@ENG:

@IDX:22223
@OFF:0xbb9d
@SPK:[\protag]
@JPN:　このあと、健康診断ですよね？　場所が分からないんですけど……。
@ENG:

@IDX:22225
@OFF:0xbc96
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あら？　言いませんでしたか？
@ENG:

@IDX:22228
@OFF:0xbcea
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい、どこでやるのかまでは……。
@ENG:

@IDX:22230
@OFF:0xbdc5
@SPK:［悠紀］
@JPN:　いえ、そうではなくて、健康診断のお時間のことなんですけど……。
@ENG:

@IDX:22233
@OFF:0xbe3b
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　だからこのあとじゃないんですか？
@ENG:

@IDX:22235
@OFF:0xbea6
@SPK:［悠紀］
@JPN:　すみません、言い忘れていたみたいですね。
@ENG:

@IDX:22238
@OFF:0xbf06
@SPK:[\protag]
@JPN:　もしかして、なくなったんですか？
@ENG:

@IDX:22240
@OFF:0xbf6b
@SPK:［悠紀］
@JPN:　いいえ。あなたのお仕事が長引きそうでしたので、健康診断は夕方からにするそうです。
@ENG:

@IDX:22242
@OFF:0xc000
@SPK:［悠紀］
@JPN:　おそらく内科の診察室を使うことになると思いますが、詳しいことは後ほど連絡いたします。
@ENG:

@IDX:22244
@OFF:0xc099
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そういうことですから、それまではお部屋で待機していてください。
@ENG:

@IDX:22247
@OFF:0xc10f
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうだったんですか……。
@ENG:

@IDX:22249
@OFF:0xc16c
@SPK:［悠紀］
@JPN:　他にはありませんか？
@ENG:

@IDX:22252
@OFF:0xc1b8
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、特には……。
@ENG:

@IDX:22254
@OFF:0xc20f
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そうですか。では……。
@ENG:

@IDX:22255
@OFF:0xc27b
@SPK:
@JPN:　ドアの外を御堂さんの足音が遠ざかっていった。
@ENG:

@IDX:22256
@OFF:0xc2b7
@SPK:
@JPN:　そうと決まれば、こんな場所に用はない。
@ENG:

@IDX:22257
@OFF:0xc2ed
@SPK:
@JPN:　くつろぐのにも休むのにも、ここよりは部屋の方が　マシだろう。
@ENG:

@IDX:22258
@OFF:0xc339
@SPK:
@JPN:　久しぶりに参考書を開くのも悪くない……。
@ENG:

@IDX:22259
@OFF:0xc42e
@SPK:
@JPN:　病院内に人気が少ないと思ったら、こんなところに　いたのか……。
@ENG:

@IDX:22260
@OFF:0xc47c
@SPK:
@JPN:　ほとんどの入院患者が集まっているのではないかと　思えるほど、中庭では患者がたむろしている。
@ENG:

@IDX:22261
@OFF:0xc4e6
@SPK:
@JPN:　ある者は散歩し、別の人はベンチに座り……。
@ENG:

@IDX:22262
@OFF:0xc520
@SPK:
@JPN:　みんな楽しそうに笑っている。
@ENG:

@IDX:22263
@OFF:0xc55c
@SPK:
@JPN:　羨ましい……。
@ENG:

@IDX:22264
@OFF:0xc57a
@SPK:
@JPN:　病気や怪我を抱えながら明るく笑える彼らが、心底　羨ましい……。
@ENG:

@IDX:22265
@OFF:0xc5c8
@SPK:
@JPN:　僕はこの仕事を始めてから、心から笑ったことなど　ない……。
@ENG:

@IDX:22267
@OFF:0xc65d
@SPK:［女の声］
@JPN:　おや兄さん、今日も仕事かい？
@ENG:

@IDX:22270
@OFF:0xc725
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　ああ、志津江さん……こんにちは。
@ENG:

@IDX:22272
@OFF:0xc792
@SPK:［志津江］
@JPN:　土日も休みなしなんて大変だねぇ？
@ENG:

@IDX:22275
@OFF:0xc7ea
@SPK:[\protag]
@JPN:　まあ、そうですね……でも、作業そのものは短時間なので。
@ENG:

@IDX:22277
@OFF:0xc867
@SPK:［志津江］
@JPN:　ふぅん……ま、働くのはいいことさね。若いうちの苦労は買ってでもしろってね？
@ENG:

@IDX:22280
@OFF:0xc8e9
@SPK:[\protag]
@JPN:　ハハハ……ところで、志津江さんは散歩ですか？
@ENG:

@IDX:22282
@OFF:0xc95c
@SPK:［志津江］
@JPN:　ああ、そうさ。運動しないと、身体がなまっちまうからねぇ。何事も、身体が資本さね。
@ENG:

@IDX:22285
@OFF:0xc9e4
@SPK:[\protag]
@JPN:　入院してるあなたに言われると、説得力がありますね。
@ENG:

@IDX:22287
@OFF:0xca5d
@SPK:［志津江］
@JPN:　お？　言ってくれるねぇ？　でも今の兄さんよりは、健康だと思うけどね？
@ENG:

@IDX:22290
@OFF:0xcad9
@SPK:[\protag]
@JPN:　……そんなに不健康に見えますか？
@ENG:

@IDX:22292
@OFF:0xcb40
@SPK:［志津江］
@JPN:　ああ。兄さんほどの青白い顔してる奴なんて、患者でもそうはいないさ。ちったぁ運動して、体力つけなきゃダメだろ？　夜がもたないんじゃないのかい？
@ENG:

@IDX:22295
@OFF:0xcc04
@SPK:[\protag]
@JPN:　相手がいれば、そういう気にもなりますけどね……。
@ENG:

@IDX:22297
@OFF:0xcc7b
@SPK:［志津江］
@JPN:　おや、いるじゃないか。とびっきりのが、すぐそばに。
@ENG:

@IDX:22300
@OFF:0xcce5
@SPK:[\protag]
@JPN:　……まさか、自分だとか言い出しませんよね？
@ENG:

@IDX:22302
@OFF:0xcd56
@SPK:［志津江］
@JPN:　もう３０も若けりゃ、言っても良かったんだけどねぇ……残念ながら、あたしじゃない。あの子さ。
@ENG:

@IDX:22305
@OFF:0xcde8
@SPK:[\protag]
@JPN:　あの子って副院長ですよね。でも副院長ともだいぶ年が離れてますけど……。
@ENG:

@IDX:22307
@OFF:0xce75
@SPK:［志津江］
@JPN:　う～ん。それもそうか……あっ、確かあの子、妹がいたんじゃなかったっけ。
@ENG:

@IDX:22310
@OFF:0xcef3
@SPK:[\protag]
@JPN:　副院長って妹がいたんですか？
@ENG:

@IDX:22312
@OFF:0xcf56
@SPK:［志津江］
@JPN:　そうさね、ずっと昔に会ったことがあったけど、ありゃ美人になってるはずさ。年も兄さんと同じぐらいなんじゃないかねぇ？その子とあんたならピッタリだろ？
@ENG:

@IDX:22315
@OFF:0xd020
@SPK:[\protag]
@JPN:　ピッタリだろって言われても……。
@ENG:

@IDX:22317
@OFF:0xd087
@SPK:［志津江］
@JPN:　でも、兄さんには姉さん女房の方があってると思うよ。あの子に目をかけてもらってるんだろ？
@ENG:

@IDX:22320
@OFF:0xd120
@SPK:[\protag]
@JPN:　め、目なんてかけてもらってませんよ！！
@ENG:

@IDX:22322
@OFF:0xd18d
@SPK:［志津江］
@JPN:　おや、兄さんが言ったんだよ？　世話になってるってさ。
@ENG:

@IDX:22325
@OFF:0xd1f9
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ……あ、ああ。そうでしたね……。
@ENG:

@IDX:22327
@OFF:0xd262
@SPK:［志津江］
@JPN:　なにをうろたえてるんだい？　……ははーん、さては兄さん、心当たりがあるんじゃないのかい？
@ENG:

@IDX:22330
@OFF:0xd2f2
@SPK:[\protag]
@JPN:　な、なんにもありませんよ！　『姉さん女房』なんて言うから変に意識しちゃっただけです！
@ENG:

@IDX:22332
@OFF:0xd38d
@SPK:［志津江］
@JPN:　まあ、そういうことにしとこうかね？
@ENG:

@IDX:22335
@OFF:0xd3e7
@SPK:[\protag]
@JPN:　お願いしますよ……。
@ENG:

@IDX:22337
@OFF:0xd442
@SPK:［志津江］
@JPN:　でも、目をかけてもらってるのは事実なんだろ？　看護婦にも噂されるくらいだからねぇ？
@ENG:

@IDX:22340
@OFF:0xd4dc
@SPK:[\protag]
@JPN:　目をかけるって……。そんな話、誰に聞いたんですか？
@ENG:

@IDX:22342
@OFF:0xd555
@SPK:［志津江］
@JPN:　看護婦からさ。
@ENG:

@IDX:22345
@OFF:0xd59b
@SPK:[\protag]
@JPN:　看護婦……御堂さんですか？
@ENG:

@IDX:22347
@OFF:0xd5fc
@SPK:［志津江］
@JPN:　違う違う。あの子が、そんな下世話な話をするはずないだろ？別の看護婦さ。
@ENG:

@IDX:22350
@OFF:0xd67a
@SPK:[\protag]
@JPN:　別の看護婦？　一体誰がそんなことを……。
@ENG:

@IDX:22352
@OFF:0xd6e9
@SPK:［志津江］
@JPN:　さあ？　名前までは知らないよ。どうせその看護婦だって誰かに聞いたんだろ？　噂なんて、そんなもんさね。
@ENG:

@IDX:22355
@OFF:0xd785
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうですか……でも目をかけてもらってるのは事実ですけど、あなたが想像しているようなことじゃありませんよ。今度、その看護婦にでも言っておいてください。
@ENG:

@IDX:22357
@OFF:0xd860
@SPK:［志津江］
@JPN:　ああ、いいよ……で、もう行くのかい？
@ENG:

@IDX:22360
@OFF:0xd8bc
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。じゃあ、僕は失礼します。
@ENG:

@IDX:22362
@OFF:0xd921
@SPK:［志津江］
@JPN:　ああ。今度は病室にでも遊びに来とくれ。
@ENG:

@IDX:22363
@OFF:0xd9df
@SPK:
@JPN:　くだらない……副院長と僕が、そんな関係になれる　はずがない。
@ENG:

@IDX:22364
@OFF:0xda2b
@SPK:
@JPN:　確かに一度はお誘いを受けたような気がする。
@ENG:

@IDX:22365
@OFF:0xda65
@SPK:
@JPN:　御堂さんが来なかったら、あのまま最後までいけた　かもしれない。
@ENG:

@IDX:22366
@OFF:0xdab3
@SPK:
@JPN:　でも現実には、あれ以降それらしい気配はない。
@ENG:

@IDX:22367
@OFF:0xdaef
@SPK:
@JPN:　……あるわけがない。
@ENG:

@IDX:22368
@OFF:0xdb13
@SPK:
@JPN:　看護婦の無責任な噂にも困ったものだ……。
@ENG:

@IDX:22369
@OFF:0xdb69
@SPK:
@JPN:　くだらない……副院長と僕が、そんな関係になれる　はずがない。
@ENG:

@IDX:22370
@OFF:0xdbb5
@SPK:
@JPN:　彼女が気にかけてくれるのは、僕の境遇に同情して　くれたからだ。
@ENG:

@IDX:22371
@OFF:0xdc03
@SPK:
@JPN:　出所は誰だか知らないが、無責任な噂を流さないで　欲しいものだ……。
@ENG:

@IDX:22372
@OFF:0xdcc7
@SPK:
@JPN:　結局、参考書を開く余裕などなかった。
@ENG:

@IDX:22373
@OFF:0xdcfb
@SPK:
@JPN:　身体はともかく神経が参ってしまい、何かしようと　すると目眩が襲ってくる。
@ENG:

@IDX:22374
@OFF:0xdd53
@SPK:
@JPN:　この状態が続けば、来年の合格など夢のまた夢だ。　
@ENG:

@IDX:22375
@OFF:0xdda3
@SPK:
@JPN:　だが、この仕事を辞めれば合格するという保証など　どこにもない。
@ENG:

@IDX:22376
@OFF:0xddf1
@SPK:
@JPN:　できればこの仕事はやり遂げたい。
@ENG:

@IDX:22377
@OFF:0xde21
@SPK:
@JPN:　３０万円の収入、２週間の余暇。
@ENG:

@IDX:22378
@OFF:0xde4f
@SPK:
@JPN:　これは捨てるにはあまりに惜しい。
@ENG:

@IDX:22379
@OFF:0xde8f
@SPK:
@JPN:　それに、今の仕事を辞めたとして、すぐ次の仕事が　見つかるとも思えない。
@ENG:

@IDX:22380
@OFF:0xdee5
@SPK:
@JPN:　今の収入を失えば、目標金額までの道は確実に遠く　なるだろう。
@ENG:

@IDX:22381
@OFF:0xdf43
@SPK:
@JPN:　仕方がない。
@ENG:

@IDX:22382
@OFF:0xdf5f
@SPK:
@JPN:　この仕事が終わってから挽回しよう。
@ENG:

@IDX:22383
@OFF:0xdfbd
@SPK:
@JPN:　……電話だ。
@ENG:

@IDX:22384
@OFF:0xdfd9
@SPK:
@JPN:　たぶん御堂さんからだろう。
@ENG:

@IDX:22385
@OFF:0xe003
@SPK:
@JPN:　健康診断の準備ができたんじゃないか？
@ENG:

@IDX:22388
@OFF:0xe085
@SPK:[\protag]
@JPN:　もしもし、どちら様でしょうか？
@ENG:

@IDX:22390
@OFF:0xe0e8
@SPK:［悠紀］
@JPN:　御堂です。健康診断の準備ができたそうなので、連絡を……。今、大丈夫ですか？
@ENG:

@IDX:22393
@OFF:0xe16a
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい、すぐに出られます。場所は内科でいいんですか？
@ENG:

@IDX:22395
@OFF:0xe1e1
@SPK:［悠紀］
@JPN:　ええ。内科の第二診察室です。場所は分かりますか？
@ENG:

@IDX:22398
@OFF:0xe249
@SPK:[\protag]
@JPN:　内科の第二って……そんなのあったんですか？　初めて聞くんですけど。
@ENG:

@IDX:22400
@OFF:0xe2d0
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そうかもしれませんね。あまり使わない場所ですから……２階の小児科診察室の隣りなんですけど、分かりませんか？
@ENG:

@IDX:22403
@OFF:0xe372
@SPK:[\protag]
@JPN:　すみません……ちょっと自信ないです。できれば案内して欲しいんですけど……。
@ENG:

@IDX:22405
@OFF:0xe401
@SPK:［悠紀］
@JPN:　それが、私も今は手が離せないんです……他の看護婦に頼んでみますから、少し待っていただけますか？
@ENG:

@IDX:22408
@OFF:0xe497
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい。
@ENG:

@IDX:22409
@OFF:0xe4d5
@SPK:
@JPN:　受話器から、御堂さんの声の代わりに軽快な音楽が　流れてくる。
@ENG:

@IDX:22410
@OFF:0xe521
@SPK:
@JPN:　都合よく手の空いている看護婦はいるだろうか？
@ENG:

@IDX:22411
@OFF:0xe55d
@SPK:
@JPN:　いなければ、最悪自分で探さなくてはいけない。
@ENG:

@IDX:22413
@OFF:0xe5e2
@SPK:［悠紀］
@JPN:　お待たせいたしました。では佐伯という看護婦が案内いたしますので、ロビーでお待ちいただけますか？
@ENG:

@IDX:22416
@OFF:0xe678
@SPK:[\protag]
@JPN:　ロビーですね？　分かりました、すぐに行きます。
@ENG:

@IDX:22418
@OFF:0xe6eb
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あっ！　分かってらっしゃるとは思いますが、佐伯にはお仕事の話はしないようにしてください。
@ENG:

@IDX:22421
@OFF:0xe77b
@SPK:[\protag]
@JPN:　守秘義務ですか？　大丈夫ですよ。僕もそこまで抜けてませんから。
@ENG:

@IDX:22423
@OFF:0xe7fe
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そうですか……それならいいんです。では、失礼します。
@ENG:

@IDX:22424
@OFF:0xe874
@SPK:
@JPN:　自分で探す必要はなくなったようだ。
@ENG:

@IDX:22425
@OFF:0xe8a6
@SPK:
@JPN:　だが、佐伯さんというのはどんな人だろう？
@ENG:

@IDX:22426
@OFF:0xe8de
@SPK:
@JPN:　考えてみれば御堂さん以外の看護婦なんて、名前は　おろか顔も分からない。
@ENG:

@IDX:22427
@OFF:0xe934
@SPK:
@JPN:　これで待ち合わせなんてしても、大丈夫だろうか？　
@ENG:

@IDX:22428
@OFF:0xe984
@SPK:
@JPN:　とにかく、先にロビーへ行って待っていよう。
@ENG:

@IDX:22429
@OFF:0xe9be
@SPK:
@JPN:　人を探している看護婦がいれば、おそらくその人が　佐伯さんだろう。
@ENG:

@IDX:22430
@OFF:0xea0e
@SPK:
@JPN:　簡単に身支度を整えると薄手のサマージャケットを　引っかけ、熱気いまだ残る中を病院へ急いだ……。　
@ENG:

@IDX:22431
@OFF:0xeb31
@SPK:
@JPN:　ロビーには、寒々しいほどに人がいない。
@ENG:

@IDX:22432
@OFF:0xeb67
@SPK:
@JPN:　看護婦は何人かいるのだが、一体どの人が佐伯さん　なのか分からない。
@ENG:

@IDX:22433
@OFF:0xebb9
@SPK:
@JPN:　お互い相手の顔も知らないで、これで見つけられる　のか？
@ENG:

@IDX:22435
@OFF:0xec50
@SPK:［女の声］
@JPN:　や、やめてって言ってるでしょ！？
@ENG:

@IDX:22437
@OFF:0xecb7
@SPK:［男の声］
@JPN:　別に食事につき合うぐらい、いいじゃないか。
@ENG:

@IDX:22439
@OFF:0xed28
@SPK:［女の声］
@JPN:　だから、これから仕事があるの！　いい加減にしてよ！
@ENG:

@IDX:22441
@OFF:0xeda1
@SPK:［男の声］
@JPN:　オイオイ、いい加減にして欲しいのは僕の方だよ……君が日勤なのは知ってるんだぞ？
@ENG:

@IDX:22443
@OFF:0xee36
@SPK:［女の声］
@JPN:　だから、変わったんだって言ったでしょ！？
@ENG:

@IDX:22444
@OFF:0xee92
@SPK:
@JPN:　うるさいな……ここは病院だぞ？
@ENG:

@IDX:22445
@OFF:0xeec0
@SPK:
@JPN:　いくら休診日だとは言っても、騒いでいい場所では　ない。
@ENG:

@IDX:22446
@OFF:0xef06
@SPK:
@JPN:　しかも黙って聞いていれば、諦めの悪い……。
@ENG:

@IDX:22447
@OFF:0xef40
@SPK:
@JPN:　一体、どこのバカだ？
@ENG:

@IDX:22448
@OFF:0xf098
@SPK:
@JPN:　声の出所は、この二人だ。
@ENG:

@IDX:22449
@OFF:0xf0c0
@SPK:
@JPN:　いやらしい笑みを浮かべた医者と、若いと言うより　幼い顔立ちの看護婦。
@ENG:

@IDX:22450
@OFF:0xf114
@SPK:
@JPN:　話を聞いた限りでは医者が看護婦を食事に誘おうと　しているようだが……。
@ENG:

@IDX:22452
@OFF:0xf1bd
@SPK:［看護婦］
@JPN:　ホントに今は忙しいの！　食事してる暇なんかないんだから！
@ENG:

@IDX:22454
@OFF:0xf23a
@SPK:［医者］
@JPN:　レストランに、二人分の席を予約してしまったんだよ？　僕に恥を掻かせる気かい？
@ENG:

@IDX:22456
@OFF:0xf3f7
@SPK:［看護婦］
@JPN:　私の都合も聞かずに予約なんかするからいけないんでしょ？　そんなの私のせいじゃないじゃん！
@ENG:

@IDX:22458
@OFF:0xf494
@SPK:［医者］
@JPN:　そうか……佐伯君がそこまで頑なに拒むなら、代わりに御堂君を誘うとしよう。彼女なら断らないだろうからな……。
@ENG:

@IDX:22460
@OFF:0xf67d
@SPK:［佐伯と呼ばれた看護婦］
@JPN:　な、何で先輩がでてくるのよ！
@ENG:

@IDX:22462
@OFF:0xf6de
@SPK:［医者］
@JPN:　佐伯君が迷惑をかけたのだから、御堂君が償う……君たちの仲からすれば、当然じゃないのかね？
@ENG:

@IDX:22464
@OFF:0xf78b
@SPK:［佐伯と呼ばれた看護婦］
@JPN:　な、なに馬鹿なこと言ってるの！　迷惑かけてるのはそっちでしょ！？
@ENG:

@IDX:22465
@OFF:0xf7fb
@SPK:
@JPN:　……どうやら、この看護婦が佐伯さんらしい。
@ENG:

@IDX:22466
@OFF:0xf835
@SPK:
@JPN:　しかし、随分とネチッこい誘い方をする男だ。
@ENG:

@IDX:22467
@OFF:0xf86f
@SPK:
@JPN:　医者の格好をしてはいるものの、この男からは品性　が欠片も感じられない。
@ENG:

@IDX:22468
@OFF:0xf8c5
@SPK:
@JPN:　佐伯さんも、僕と同様に、この医師には悪印象しか　抱いていないようだ。
@ENG:

@IDX:22469
@OFF:0xf919
@SPK:
@JPN:　……いや、はっきりと嫌悪している。
@ENG:

@IDX:22470
@OFF:0xf94b
@SPK:
@JPN:　とすれば僕は……。
@ENG:

@IDX:22471
@OFF:0xf981
@SPK:
@JPN:助け舟を出す
@ENG:

@IDX:22472
@OFF:0xf994
@SPK:
@JPN:静観する
@ENG:

@IDX:22473
@OFF:0xf9d7
@SPK:
@JPN:　余計なお世話かもしれないが、黙って見過ごすわけ　にもいかないだろう。
@ENG:

@IDX:22474
@OFF:0xfa2b
@SPK:
@JPN:　それに、佐伯さんが僕を診察室まで案内してくれる　段取りになっている。
@ENG:

@IDX:22475
@OFF:0xfa7f
@SPK:
@JPN:　もちろん、受付で場所を聞いて、一人で先に行って　しまうという手もあるが、それでは佐伯さんの立場　がないだろう。
@ENG:

@IDX:22478
@OFF:0xfb39
@SPK:[\protag]
@JPN:　すみません……少々よろしいでしょうか？
@ENG:

@IDX:22480
@OFF:0xfba4
@SPK:［医者］
@JPN:　ん？　何だね君は？　いま立て込んでるんだ。用なら後にしてくれないか？
@ENG:

@IDX:22483
@OFF:0xfc20
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、先生に用はありません。あの……佐伯さんですよね？
@ENG:

@IDX:22485
@OFF:0xfdc9
@SPK:［佐伯］
@JPN:　そ、そだけど……あっ！　きみは……。
@ENG:

@IDX:22488
@OFF:0xfe25
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ。案内をお願いした者です。
@ENG:

@IDX:22490
@OFF:0xffba
@SPK:［医者］
@JPN:　君！　案内なんて、他の看護婦に頼みたまえ！　佐伯君は今、僕と話を……。
@ENG:

@IDX:22493
@OFF:0x10038
@SPK:[\protag]
@JPN:　終わるまで待っても僕は構いませんが……でもそうすると副院長を待たせることになってしまいます。それでもいいんですね、先生？
@ENG:

@IDX:22495
@OFF:0x10223
@SPK:［医者］
@JPN:　ふ、副院長？
@ENG:

@IDX:22498
@OFF:0x10267
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。彼女に副院長のところまで案内してもらう約束をしていますから。
@ENG:

@IDX:22500
@OFF:0x1041c
@SPK:［佐伯］
@JPN:　これ以上しつこくすると、遅れた理由にしちゃうよ？　それでもいい？
@ENG:

@IDX:22502
@OFF:0x105d3
@SPK:［医者］
@JPN:　くっ……わ、分かった。またの機会にしよう……。
@ENG:

@IDX:22504
@OFF:0x10774
@SPK:［佐伯］
@JPN:　……先輩も誘っちゃダメだからね？
@ENG:

@IDX:22506
@OFF:0x107d9
@SPK:［医者］
@JPN:　分かっている！　クソッ……貴様の顔、忘れないからな……。
@ENG:

@IDX:22508
@OFF:0x109e8
@SPK:［佐伯］
@JPN:　あーっ、すっきりした！　まったく、やんなっちゃうよ！
@ENG:

@IDX:22511
@OFF:0x10a54
@SPK:[\protag]
@JPN:　大丈夫ですか？
@ENG:

@IDX:22513
@OFF:0x10b1d
@SPK:［佐伯］
@JPN:　うん！　きみのおかげだよ。ありがとね？
@ENG:

@IDX:22516
@OFF:0x10b7b
@SPK:[\protag]
@JPN:　いや、でも、僕もついあんな言い方してしまって……むこうの方が立場は上なんじゃ……。
@ENG:

@IDX:22518
@OFF:0x10c12
@SPK:［佐伯］
@JPN:　平気へーき。あんな奴に睨まれたってどうってことないもん。
@ENG:

@IDX:22521
@OFF:0x10c82
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも……。
@ENG:

@IDX:22523
@OFF:0x10cd1
@SPK:［佐伯］
@JPN:　平気だってば。ほらほら、時間が勿体ないから歩きながら話そうよ。あ、私、佐伯真魚。よろしくね。
@ENG:

@IDX:22526
@OFF:0x10d65
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい。よろしくお願いします。
@ENG:

@IDX:22527
@OFF:0x10dce
@SPK:
@JPN:　……そうだな。
@ENG:

@IDX:22528
@OFF:0x10dec
@SPK:
@JPN:　この医者がいかに品格に欠けていようとも、一応の　仁義は通すべきだろう。
@ENG:

@IDX:22529
@OFF:0x10e42
@SPK:
@JPN:　昔の人も言っている。『人の恋路を邪魔する奴は馬　に蹴られて死んじまえ』と……。
@ENG:

@IDX:22530
@OFF:0x10ea0
@SPK:
@JPN:　……心情的には、この医師は『適応外』にしたいの　だが……。
@ENG:

@IDX:22531
@OFF:0x10eea
@SPK:
@JPN:　佐伯さんには悪いが、僕は日和見を決め込むことに　した。
@ENG:

@IDX:22533
@OFF:0x110a1
@SPK:［佐伯］
@JPN:　あっ！　きみは……。
@ENG:

@IDX:22534
@OFF:0x110e7
@SPK:
@JPN:　どうやら、馬に蹴られて死ぬ羽目になりそうだ。
@ENG:

@IDX:22535
@OFF:0x11123
@SPK:
@JPN:　当の佐伯さんが、ロビーに佇む僕の姿を認めて駆け　寄ってきてしまった。
@ENG:

@IDX:22536
@OFF:0x11177
@SPK:
@JPN:　この医師には悪いが、彼のナンパが失敗することは　図らずも確定してしまった。
@ENG:

@IDX:22537
@OFF:0x111d1
@SPK:
@JPN:　……まあ、あのまま続けても、結果は見えていたと　思うが……。
@ENG:

@IDX:22540
@OFF:0x11259
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ。案内をお願いした者です。
@ENG:

@IDX:22542
@OFF:0x113e6
@SPK:［佐伯］
@JPN:　うん、知ってる。あ、私、佐伯真魚。よろしくね。
@ENG:

@IDX:22545
@OFF:0x1144c
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。
@ENG:

@IDX:22547
@OFF:0x114bb
@SPK:［真魚］
@JPN:　じゃ、行こっか。
@ENG:

@IDX:22549
@OFF:0x1163a
@SPK:［医者］
@JPN:　ちょっと待てーい！！
@ENG:

@IDX:22551
@OFF:0x117bd
@SPK:［真魚］
@JPN:　はあ？
@ENG:

@IDX:22554
@OFF:0x117fb
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:22556
@OFF:0x1184a
@SPK:［医者］
@JPN:　誰だ、貴様は？　佐伯君は今、この僕と楽しい午後のひと時を過ごしているんだ。後からしゃしゃり出てきて僕たちの邪魔をするとは、どういうつもりだ？
@ENG:

@IDX:22558
@OFF:0x11a45
@SPK:［真魚］
@JPN:　なーにが『楽しい午後のひと時』よ！！　私は、全然、全く、これっぽっちも、楽しくなんてないの！
@ENG:

@IDX:22560
@OFF:0x11c10
@SPK:［医者］
@JPN:　う～ん。そうやって恥じらいを見せる君も、一段と素敵だ。と言うわけで、食事……つき合ってくれるね？
@ENG:

@IDX:22562
@OFF:0x11cb5
@SPK:［真魚］
@JPN:　ま、まだ言うか……この……！！
@ENG:

@IDX:22565
@OFF:0x11d0b
@SPK:[\protag]
@JPN:　すみません……少々よろしいでしょうか？
@ENG:

@IDX:22567
@OFF:0x11ea0
@SPK:［真魚］
@JPN:　あ……ごめんごめん。案内だよね？　ちょっと待ってて。すぐこの人黙らせるから。
@ENG:

@IDX:22570
@OFF:0x11f24
@SPK:[\protag]
@JPN:　はあ……。
@ENG:

@IDX:22572
@OFF:0x1209d
@SPK:［医者］
@JPN:　おい貴様！　案内なんて、他の看護婦に頼めばいいだろう！？大体、佐伯君は今、忙しいんだ。せめて僕と彼女との話が済んでからにしてもらおうか！？
@ENG:

@IDX:22575
@OFF:0x1215f
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、僕は待っても構いません。ただ、そうすると副院長を待たせることになってしまいます。それでよろしいのなら、そうしますが……？
@ENG:

@IDX:22577
@OFF:0x1234c
@SPK:［医者］
@JPN:　ふ、副院長？
@ENG:

@IDX:22580
@OFF:0x12390
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。彼女に副院長のところまで案内してもらう約束になってるんです。
@ENG:

@IDX:22582
@OFF:0x12545
@SPK:［真魚］
@JPN:　そうそう。これ以上しつこくしたら、副院長先生に『北先生のせいで遅れました』って言いつけちゃうよ？　それでもいい？
@ENG:

@IDX:22584
@OFF:0x1273a
@SPK:［北というらしい医者］
@JPN:　くっ……わ、分かった。食事は、またの機会にしよう……。
@ENG:

@IDX:22586
@OFF:0x128e3
@SPK:［真魚］
@JPN:　……先輩も誘っちゃダメだからね？
@ENG:

@IDX:22588
@OFF:0x12956
@SPK:［北というらしい医者］
@JPN:　分かっている！　クソッ……貴様の顔、忘れないからな……。
@ENG:

@IDX:22590
@OFF:0x12b65
@SPK:［真魚］
@JPN:　あーっ、すっきりした！　まったく、やんなっちゃうよ！
@ENG:

@IDX:22593
@OFF:0x12bd1
@SPK:[\protag]
@JPN:　大丈夫ですか？
@ENG:

@IDX:22595
@OFF:0x12c9a
@SPK:［真魚］
@JPN:　うん！　きみのおかげだよ。ありがとね？
@ENG:

@IDX:22598
@OFF:0x12cf8
@SPK:[\protag]
@JPN:　いや、でも、僕もついあんな言い方してしまって……むこうの方が立場は上なんじゃ……。
@ENG:

@IDX:22600
@OFF:0x12d8f
@SPK:［真魚］
@JPN:　平気へーき。あんな奴に睨まれたってどうってことないもん。
@ENG:

@IDX:22603
@OFF:0x12dff
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも……。
@ENG:

@IDX:22605
@OFF:0x12e4e
@SPK:［真魚］
@JPN:　平気だってば。あっ！　ほらほら、早く行かないと本当に遅れちゃう。きっと副院長先生待ってるよ。
@ENG:

@IDX:22608
@OFF:0x12ee2
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ……それもそうですね。じゃあ、行きましょうか。
@ENG:

@IDX:22610
@OFF:0x1307e
@SPK:［真魚］
@JPN:　……でさぁ、あいつってば奥さんがいるのに、ナンパしまくりなわけ。看護婦、研修医、患者さん……もう見境なしって感じ。私だけじゃなくて先輩にも迷惑かけてるんだから。
@ENG:

@IDX:22613
@OFF:0x13156
@SPK:[\protag]
@JPN:　それでよく問題になりませんね？
@ENG:

@IDX:22615
@OFF:0x131b9
@SPK:［真魚］
@JPN:　なんでも、奥さんが理事の娘なんだってさ。そのせいで、やりたい放題……全く頭に来ちゃう！
@ENG:

@IDX:22616
@OFF:0x1323f
@SPK:
@JPN:　佐伯真魚という看護婦は、それにしても本当によく　しゃべった。
@ENG:

@IDX:22617
@OFF:0x1328b
@SPK:
@JPN:　余程鬱憤が溜まっていたのだろう。
@ENG:

@IDX:22618
@OFF:0x132c6
@SPK:
@JPN:　北とかいう医者の悪口を、淀みなく話し続けた。
@ENG:

@IDX:22619
@OFF:0x13307
@SPK:
@JPN:　先程の医師（北というらしい）の悪口を、淀みなく　話し続けた。
@ENG:

@IDX:22620
@OFF:0x13353
@SPK:
@JPN:　曰く、女性器見たさに産婦人科医になった……。
@ENG:

@IDX:22621
@OFF:0x1338f
@SPK:
@JPN:　曰く、断り切れずに弄ばれた看護婦もいる……。
@ENG:

@IDX:22622
@OFF:0x133cb
@SPK:
@JPN:　彼女の言葉が本当だとすると、クビにならないのは　奥さんが理事の娘だからに他ならない。
@ENG:

@IDX:22623
@OFF:0x1343f
@SPK:
@JPN:　佐伯さんにまで手を出すところを見ると、かなりの　女好きに思える。
@ENG:

@IDX:22624
@OFF:0x1348f
@SPK:
@JPN:　いや、別に彼女が不美人というわけではない。
@ENG:

@IDX:22625
@OFF:0x134c9
@SPK:
@JPN:　ただ、年齢的にちょっと……。
@ENG:

@IDX:22627
@OFF:0x1353e
@SPK:［真魚］
@JPN:　コラ！　何ジロジロ見てんのよ？
@ENG:

@IDX:22630
@OFF:0x13594
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？
@ENG:

@IDX:22632
@OFF:0x135dd
@SPK:［真魚］
@JPN:　ひょっとして『こんな子供に手を出すなんて……』とか思ってるんじゃないでしょうね！？
@ENG:

@IDX:22635
@OFF:0x13667
@SPK:[\protag]
@JPN:　ご、誤解ですよ！　そんなこと思ってません！！
@ENG:

@IDX:22637
@OFF:0x136d8
@SPK:［真魚］
@JPN:　……ホントに？
@ENG:

@IDX:22640
@OFF:0x1371e
@SPK:[\protag]
@JPN:　本当です！
@ENG:

@IDX:22642
@OFF:0x137e3
@SPK:［真魚］
@JPN:　ならイイんだ！　へへへ、疑ってごめんね？
@ENG:

@IDX:22645
@OFF:0x13843
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、別に……。それより……診察室ってどこにあるんでしょうか？
@ENG:

@IDX:22647
@OFF:0x1393c
@SPK:［真魚］
@JPN:　ほえ？　
@ENG:

@IDX:22648
@OFF:0x139dc
@SPK:
@JPN:……イッケナイ！　通り過ぎちゃった！
@ENG:

@IDX:22651
@OFF:0x13a36
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:22652
@OFF:0x13a82
@SPK:
@JPN:　子供っぽく見られるのが余程嫌いらしい。
@ENG:

@IDX:22653
@OFF:0x13ab8
@SPK:
@JPN:　……と言うことは、見た目よりも年上……１０代の　後半くらいだろうか？
@ENG:

@IDX:22654
@OFF:0x13b0c
@SPK:
@JPN:　実年齢が非常に気になるが、彼女に聞くのはやめて　おいた方がいいだろう。
@ENG:

@IDX:22656
@OFF:0x13ca6
@SPK:［真魚］
@JPN:　ほら、ここだよ。そこのドアが、内科第二診察室。
@ENG:

@IDX:22659
@OFF:0x13d0c
@SPK:[\protag]
@JPN:　ホントだ……ありがとう、助かりました。
@ENG:

@IDX:22661
@OFF:0x13d77
@SPK:［真魚］
@JPN:　なんのなんの……
@ENG:

@IDX:22662
@OFF:0x13dc7
@SPK:
@JPN:佐伯でーす。入ってもいい？
@ENG:

@IDX:22665
@OFF:0x13e17
@SPK:[\protag]
@JPN:　ちょ……なんで佐伯さんまで！？
@ENG:

@IDX:22667
@OFF:0x13e7a
@SPK:［千草］
@JPN:　……どうぞ、開いてるわよ。
@ENG:

@IDX:22669
@OFF:0x13f45
@SPK:［真魚］
@JPN:　ほら、入っていいってさ……失礼しまーす！
@ENG:

@IDX:22670
@OFF:0x13fbf
@SPK:
@JPN:　止める間もなく、彼女は診察室に入ってしまう。
@ENG:

@IDX:22671
@OFF:0x13ffb
@SPK:
@JPN:　彼女が一緒に入ってどうするつもりなんだ？
@ENG:

@IDX:22672
@OFF:0x14033
@SPK:
@JPN:　疑問に思いながら、続いて僕もドアをくぐる。
@ENG:

@IDX:22674
@OFF:0x141cd
@SPK:［千草］
@JPN:　いらっしゃい、待ってたわよ。佐伯さんもご苦労様。もう仕事に戻ってちょうだい。
@ENG:

@IDX:22676
@OFF:0x1425e
@SPK:［真魚］
@JPN:　うん！　じゃあ先生、またあとでね。バイバイ！
@ENG:

@IDX:22678
@OFF:0x142cf
@SPK:［千草］
@JPN:　ええ、またあとでね。
@ENG:

@IDX:22679
@OFF:0x14325
@SPK:
@JPN:　佐伯さんは副院長に手を振りながら出て行った。
@ENG:

@IDX:22680
@OFF:0x14361
@SPK:
@JPN:　病院の事実上トップで、全ての人事を統括している　副院長に、一介の看護婦が……バイバイ？
@ENG:

@IDX:22681
@OFF:0x143c7
@SPK:
@JPN:　佐伯さんが怖いもの知らずなのか、それとも副院長　が寛容なのか……。
@ENG:

@IDX:22682
@OFF:0x14429
@SPK:
@JPN:　いや、その両方かもしれない。
@ENG:

@IDX:22683
@OFF:0x14455
@SPK:
@JPN:　佐伯さんは僕とは初対面のはずだが、それにしては　馴れ馴れしい口調でペラペラと話しかけてきた。
@ENG:

@IDX:22684
@OFF:0x144c1
@SPK:
@JPN:　だが、不思議と不快な気はしなかった。
@ENG:

@IDX:22685
@OFF:0x144f5
@SPK:
@JPN:　彼女の外見も手伝ってのことに違いない。
@ENG:

@IDX:22686
@OFF:0x1453d
@SPK:
@JPN:　この病院で佐伯さんは、そういうキャラとして存在　を許容されているのだろう。
@ENG:

@IDX:22687
@OFF:0x14597
@SPK:
@JPN:　副院長にしても例外ではないのだ……おそらく。
@ENG:

@IDX:22689
@OFF:0x14620
@SPK:［千草］
@JPN:　ねえ、いつまでボーッとしてるつもり？　そろそろ始めたいんだけど……。
@ENG:

@IDX:22692
@OFF:0x1469c
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　始めるって、何を？
@ENG:

@IDX:22694
@OFF:0x146f9
@SPK:［千草］
@JPN:　やだ……フフフ……何って健康診断に決まってるじゃない。
@ENG:

@IDX:22697
@OFF:0x14767
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい、そりゃそうですよね。すいません。ちょっと驚いたもので……。
@ENG:

@IDX:22699
@OFF:0x147f0
@SPK:［千草］
@JPN:　驚いた？
@ENG:

@IDX:22702
@OFF:0x14830
@SPK:[\protag]
@JPN:　いや……あの佐伯さんって人、フランクと言うかフレンドリーと言うか……。
@ENG:

@IDX:22704
@OFF:0x148bb
@SPK:［千草］
@JPN:　可愛いでしょ？　あの子、誰にでもあんな感じよ？　この病院のマスコットみたいなところね。
@ENG:

@IDX:22707
@OFF:0x14949
@SPK:[\protag]
@JPN:　はあ……。
@ENG:

@IDX:22708
@OFF:0x14987
@SPK:
@JPN:　やはり予想は当たっていたらしい。
@ENG:

@IDX:22709
@OFF:0x149b7
@SPK:
@JPN:　それにしても、この副院長という女性。
@ENG:

@IDX:22710
@OFF:0x149eb
@SPK:
@JPN:　度量が広いのか、革新的なのか……。
@ENG:

@IDX:22711
@OFF:0x14a1d
@SPK:
@JPN:　改めて、目の前の理知的な女医に好感を覚えた。
@ENG:

@IDX:22713
@OFF:0x14aa2
@SPK:［千草］
@JPN:　……なあに？　今度は人の顔をまじまじと見つめて……。
@ENG:

@IDX:22716
@OFF:0x14b0e
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、別に……申し訳ありません。
@ENG:

@IDX:22718
@OFF:0x14b73
@SPK:［千草］
@JPN:　ま、いいわ……さ、腕を出して。最初に血を採っちゃうから。ああ、上着はその籠の中ね。
@ENG:

@IDX:22721
@OFF:0x14bfd
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。お願いします。
@ENG:

@IDX:22722
@OFF:0x14c45
@SPK:
@JPN:　腕を出すと、副院長は手際よく採血の準備を進めて　いった。
@ENG:

@IDX:22723
@OFF:0x14c8d
@SPK:
@JPN:　上腕をチューブで縛り、肘の内側を数回叩く。
@ENG:

@IDX:22724
@OFF:0x14cc7
@SPK:
@JPN:　普段こんなことは看護婦任せだろうに、手順に全く　淀みがない。
@ENG:

@IDX:22726
@OFF:0x14d5c
@SPK:［千草］
@JPN:　さ、親指を握って……じゃあ、いくわよ？
@ENG:

@IDX:22729
@OFF:0x14dba
@SPK:[\protag]
@JPN:　あの……痛くしないでください……。
@ENG:

@IDX:22731
@OFF:0x14e21
@SPK:［千草］
@JPN:　フフフ……大丈夫よ。痛いのは最初だけだから。
@ENG:

@IDX:22735
@OFF:0x14ec7
@SPK:[\protag]
@JPN:……！？　いっ……っ！
@ENG:

@IDX:22737
@OFF:0x14f96
@SPK:［千草］
@JPN:　きゃっ！　急にどうしたの？
@ENG:

@IDX:22738
@OFF:0x14fee
@SPK:
@JPN:　注射の痛みに思わず腕を引いてしまった。
@ENG:

@IDX:22739
@OFF:0x15024
@SPK:
@JPN:　そのせいで注射針が無理に引き抜かれた。
@ENG:

@IDX:22740
@OFF:0x1506c
@SPK:
@JPN:　痛みで腕がジンジンする。
@ENG:

@IDX:22741
@OFF:0x15094
@SPK:
@JPN:　痺れるような痛みが、僕の失敗を明確に示す。
@ENG:

@IDX:22743
@OFF:0x1518b
@SPK:［千草］
@JPN:　んもう……急にどうしたって言うの？
@ENG:

@IDX:22746
@OFF:0x151e5
@SPK:[\protag]
@JPN:　す、すいません。ちょっとビックリしちゃって。
@ENG:

@IDX:22748
@OFF:0x15256
@SPK:［千草］
@JPN:　もう……もしかして注射苦手なの？
@ENG:

@IDX:22751
@OFF:0x152ae
@SPK:[\protag]
@JPN:　そんなでもないんですけど……ホントにすみませんでした。
@ENG:

@IDX:22753
@OFF:0x15329
@SPK:［千草］
@JPN:　ふぅ、ご覧なさい。無理に抜いたから出血が酷いわ。
@ENG:

@IDX:22754
@OFF:0x153e2
@SPK:
@JPN:　確かに、針を引き抜いた辺りから、かなりの出血が　見られる。
@ENG:

@IDX:22755
@OFF:0x1542c
@SPK:
@JPN:　注射器から飛び散ってしまったのか、副院長の手や　白衣の袖口にも血痕が付着していた。
@ENG:

@IDX:22756
@OFF:0x1548e
@SPK:
@JPN:　今も流れ出る血が腕を伝い、ズボンや診察台の上に　赤いシミを広げつつある。
@ENG:

@IDX:22758
@OFF:0x155f0
@SPK:［千草］
@JPN:　ねえ……大丈夫？
@ENG:

@IDX:22761
@OFF:0x15638
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　ああ、はい……、大したことありません。
@ENG:

@IDX:22763
@OFF:0x156a9
@SPK:［千草］
@JPN:　でも、血がこぼれて……。
@ENG:

@IDX:22766
@OFF:0x156f9
@SPK:[\protag]
@JPN:　こんなの、ちょっと押さえておけばすぐ……。
@ENG:

@IDX:22768
@OFF:0x157e2
@SPK:［千草］
@JPN:　……血……赤い、血……流れて……こぼれて……。
@ENG:

@IDX:22771
@OFF:0x15848
@SPK:[\protag]
@JPN:　……副院長？
@ENG:

@IDX:22772
@OFF:0x15890
@SPK:
@JPN:　副院長の様子がおかしい。
@ENG:

@IDX:22773
@OFF:0x158b8
@SPK:
@JPN:　もしかして血を見るのがダメな人なのだろうか？
@ENG:

@IDX:22774
@OFF:0x158f4
@SPK:
@JPN:　医者の中でも内科医には、血を見ると貧血を起こす　人が時々いるらしい。
@ENG:

@IDX:22775
@OFF:0x15948
@SPK:
@JPN:　ひょっとして、彼女もその手合いなのか？
@ENG:

@IDX:22778
@OFF:0x159ba
@SPK:[\protag]
@JPN:　副院長！
@ENG:

@IDX:22780
@OFF:0x15a8b
@SPK:［千草］
@JPN:　……えっ！？　あ、なに？
@ENG:

@IDX:22783
@OFF:0x15adb
@SPK:[\protag]
@JPN:　『なに？』じゃありませんよ。もう血は止まりました。大丈夫ですか？
@ENG:

@IDX:22785
@OFF:0x15b60
@SPK:［千草］
@JPN:　あ、そ、そうね……ごめんなさい、私ボーッとしてた？
@ENG:

@IDX:22788
@OFF:0x15bca
@SPK:[\protag]
@JPN:　それはもう、見事に目の色が変わってました。貧血ですか？
@ENG:

@IDX:22790
@OFF:0x15c45
@SPK:［千草］
@JPN:　え、ええ……みっともない姿を見せちゃったわね？
@ENG:

@IDX:22793
@OFF:0x15cab
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ、そんなことは……それより申し訳ありませんでした。採血の邪魔をしちゃって……。
@ENG:

@IDX:22795
@OFF:0x15d44
@SPK:［千草］
@JPN:　いえ、いいのよ。でも、そうね……今日はとりあえず、採血はなしにしましょう。
@ENG:

@IDX:22798
@OFF:0x15dc6
@SPK:[\protag]
@JPN:　すみませんでした……。
@ENG:

@IDX:22800
@OFF:0x15e21
@SPK:［千草］
@JPN:　別に気にしなくてもいいわ。それより問診に移りましょう。
@ENG:

@IDX:22803
@OFF:0x15e8f
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。
@ENG:

@IDX:22804
@OFF:0x15f28
@SPK:
@JPN:　問診が済むと、色々な検査が行われ、様々なデータ　を取られた。
@ENG:

@IDX:22805
@OFF:0x15f74
@SPK:
@JPN:　ようやく健康診断が終わろうとしている。
@ENG:

@IDX:22806
@OFF:0x15faa
@SPK:
@JPN:　あとは副院長から結果を聞くだけだ。
@ENG:

@IDX:22808
@OFF:0x160de
@SPK:［千草］
@JPN:　……さてと、これでカルテの記入も終わったし……もう帰っていいわよ。
@ENG:

@IDX:22811
@OFF:0x16158
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　あ、あの……診断の結果は……？
@ENG:

@IDX:22813
@OFF:0x161c1
@SPK:［千草］
@JPN:　ああ、そう言えば言ってなかったわね……そうね、今のところ問題はないわ。ただし血液検査ができなかったから、私の所見でしかないけど……。
@ENG:

@IDX:22816
@OFF:0x1627d
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　でも他にも色々検査されましたけど……。
@ENG:

@IDX:22818
@OFF:0x162ee
@SPK:［千草］
@JPN:　ああ、あれはあなたの基本的なデータを取るためのものなの。健康診断自体とはあまり関係がないわ。
@ENG:

@IDX:22821
@OFF:0x16382
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　そうなんですか？
@ENG:

@IDX:22823
@OFF:0x163dd
@SPK:［千草］
@JPN:　ええ。だから次の健康診断からは、これほど手間はかからないはずよ。
@ENG:

@IDX:22826
@OFF:0x16455
@SPK:[\protag]
@JPN:　……はあ。
@ENG:

@IDX:22828
@OFF:0x164a4
@SPK:［千草］
@JPN:　なあに？　不満そうね。なんだったら検査課まで行って、さっきのデータももらってくるけど……どうする？
@ENG:

@IDX:22831
@OFF:0x1653e
@SPK:[\protag]
@JPN:　い、いえ、副院長の所見だけで結構です。信じてますから。
@ENG:

@IDX:22833
@OFF:0x165b9
@SPK:［千草］
@JPN:　そう？　ありがと……じゃあ、早く帰りなさい。放っておくと血のシミは落ちなくなるわよ。
@ENG:

@IDX:22834
@OFF:0x16651
@SPK:
@JPN:　そう言うと、副院長は机に向かってしまう。
@ENG:

@IDX:22835
@OFF:0x16689
@SPK:
@JPN:　ここにいても、彼女の邪魔になるだけだ。
@ENG:

@IDX:22836
@OFF:0x166bf
@SPK:
@JPN:　部屋に帰って休むとしようか……。
@ENG:

@IDX:22839
@OFF:0x1672b
@SPK:[\protag]
@JPN:　それじゃあ、失礼します……。
@ENG:

@IDX:22840
@OFF:0x1686b
@SPK:
@JPN:　じわじわと布地を侵蝕してゆく鮮血の文様……。
@ENG:

@IDX:22841
@OFF:0x169a2
@SPK:
@JPN:　それを見た瞬間、フラッシュバックのような記憶の　奔流が襲ってきた。
@ENG:

@IDX:22842
@OFF:0x169f4
@SPK:
@JPN:　死体の傷からは、出血などしなかった……。
@ENG:

@IDX:22843
@OFF:0x16a2c
@SPK:
@JPN:　あの傷口の滑らかな断面が、僕の腕を流れ落ちる血　と重なる。
@ENG:

@IDX:22844
@OFF:0x16b71
@SPK:
@JPN:　あの傷も、本来なら出血したはずだ。
@ENG:

@IDX:22845
@OFF:0x16ba3
@SPK:
@JPN:　あれは死体だったから出血しなかっただけ。
@ENG:

@IDX:22846
@OFF:0x16bdb
@SPK:
@JPN:　もし生きてたら、これ以上の勢いで吹き出し、辺り　を血の海に……。
@ENG:

@IDX:22847
@OFF:0x16c92
@SPK:
@JPN:　頭がグラグラする……。
@ENG:

@IDX:22848
@OFF:0x16cb8
@SPK:
@JPN:　気持ちが悪い……。
@ENG:

@IDX:22849
@OFF:0x16cda
@SPK:
@JPN:　胃に手を突っ込んで掻き回されたような吐き気が、　喉の奥に込み上げてくる。
@ENG:

@IDX:22850
@OFF:0x16d4a
@SPK:
@JPN:　気がつくと、唇に柔らかい感触が生まれていた。
@ENG:

@IDX:22851
@OFF:0x16d86
@SPK:
@JPN:　同時に粘膜に包まれたものが差し出され、僕の唇を　割って口内に潜り込んでくる。
@ENG:

@IDX:22852
@OFF:0x16df2
@SPK:
@JPN:　キス……されてる……。
@ENG:

@IDX:22853
@OFF:0x16e18
@SPK:
@JPN:　それに気がついたのは、唾液と一緒に粒状のものが　入り込んだ時だ。
@ENG:

@IDX:22854
@OFF:0x16e68
@SPK:
@JPN:　口内に潜り込んだ副院長の舌が、飲めと言うように　奥へ押しやる。
@ENG:

@IDX:22856
@OFF:0x16faf
@SPK:［千草］
@JPN:　大丈夫？　少しは落ち着いた？
@ENG:

@IDX:22859
@OFF:0x17003
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい……あ、あの、副院長？　今のは……。
@ENG:

@IDX:22861
@OFF:0x17070
@SPK:［千草］
@JPN:　軽い精神安定剤よ。高ぶった神経を抑える薬……だいぶ興奮してるようだったから……。
@ENG:

@IDX:22864
@OFF:0x170f8
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、いや、それだけじゃなくて……その、えっと……。
@ENG:

@IDX:22866
@OFF:0x1716f
@SPK:［千草］
@JPN:　ひょっとして、飲ませ方が気に入らなかった？　他には方法がなかったから、口移しにしたんだけど……。
@ENG:

@IDX:22869
@OFF:0x17207
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ！　そんなことは……。
@ENG:

@IDX:22871
@OFF:0x172de
@SPK:［千草］
@JPN:　フフフ……じゃあ、もう１回する？　今度は、薬なしで……。
@ENG:

@IDX:22874
@OFF:0x1734e
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　あ、あの、そんな……。
@ENG:

@IDX:22876
@OFF:0x17425
@SPK:［千草］
@JPN:　フフフ……冗談よ。今は落ち着くのが先……さぁ、目を閉じて気持ちを楽に……。
@ENG:

@IDX:22879
@OFF:0x174a7
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい……。
@ENG:

@IDX:22880
@OFF:0x17534
@SPK:
@JPN:　言われた通り身体を楽にして目を閉じる。
@ENG:

@IDX:22881
@OFF:0x1756a
@SPK:
@JPN:　ゆっくり呼吸すると、消毒用エタノールに混じって　爽やかな香りが鼻腔を刺激する。
@ENG:

@IDX:22882
@OFF:0x175c8
@SPK:
@JPN:　この香りは……副院長……か。
@ENG:

@IDX:22883
@OFF:0x175f4
@SPK:
@JPN:　……なぜこんなに近くから薫ってくるんだ？
@ENG:

@IDX:22884
@OFF:0x1762c
@SPK:
@JPN:　それに、この妙な感触は……。
@ENG:

@IDX:22885
@OFF:0x1770b
@SPK:
@JPN:　目を開けると、その理由がよく分かった。
@ENG:

@IDX:22886
@OFF:0x17741
@SPK:
@JPN:　副院長が傷口を舐めている。
@ENG:

@IDX:22887
@OFF:0x1776b
@SPK:
@JPN:　傷を覆い隠すように唇を這わせ、舌先でちろちろと　舐めては軽くついばむように吸う。
@ENG:

@IDX:22888
@OFF:0x177cb
@SPK:
@JPN:　そのたびにピリッと来る痛みと共に、傷口から快感　が生まれる。
@ENG:

@IDX:22891
@OFF:0x17853
@SPK:[\protag]
@JPN:　副院長……何を？
@ENG:

@IDX:22893
@OFF:0x178a8
@SPK:［千草］
@JPN:　何って……分からないの？　こうすると傷が治るのよ。小さい頃、お母さんとかにしてもらわなかった？
@ENG:

@IDX:22896
@OFF:0x1793e
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ……母は僕を生んですぐに亡くなったから……。
@ENG:

@IDX:22898
@OFF:0x179b3
@SPK:［千草］
@JPN:　そう……悪いことを聞いちゃったわね？　お詫びに……んっ、チュッ……。
@ENG:

@IDX:22901
@OFF:0x17a2f
@SPK:[\protag]
@JPN:　うくっ……あ……。
@ENG:

@IDX:22903
@OFF:0x17a86
@SPK:［千草］
@JPN:　ごめんなさい、ちょっと強すぎかしら……痛かった？
@ENG:

@IDX:22906
@OFF:0x17aee
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ、大丈夫です……。
@ENG:

@IDX:22908
@OFF:0x17b4b
@SPK:［千草］
@JPN:　そう？　じゃあ、続けるわね……ピチャ、チュッ……。
@ENG:

@IDX:22909
@OFF:0x17baf
@SPK:
@JPN:　副院長の舌が動くたび、ピチャピチャと濡れた音が　診察室に響く。
@ENG:

@IDX:22910
@OFF:0x17bfd
@SPK:
@JPN:　かなりの出血だったにも関わらず、もう傷口から血　は流れていない。
@ENG:

@IDX:22911
@OFF:0x17c4d
@SPK:
@JPN:　代わりに、腕は副院長の唾液にまみれてヌラヌラと　濡れ光っている。
@ENG:

@IDX:22914
@OFF:0x17cd9
@SPK:[\protag]
@JPN:　副院長……もう、血は止まったみたいなので……。
@ENG:

@IDX:22916
@OFF:0x17d4c
@SPK:［千草］
@JPN:　そうね……あら？　ズボンにも血がついてる……こんなところにも垂れてたのね……。
@ENG:

@IDX:22919
@OFF:0x17e8e
@SPK:[\protag]
@JPN:　なっ……ズボンなんて舐めて、何を……。
@ENG:

@IDX:22921
@OFF:0x17ef9
@SPK:［千草］
@JPN:　傷が治ったのに……血のシミがついてちゃおかしいでしょ？　だから、血がついてちゃいけないの……。
@ENG:

@IDX:22924
@OFF:0x17f8f
@SPK:[\protag]
@JPN:　な、何を言ってるんですか？　そ、そんなの……うくっ！
@ENG:

@IDX:22926
@OFF:0x18008
@SPK:［千草］
@JPN:　フフフ……あなたの血も……美味しい……温かくて……。
@ENG:

@IDX:22927
@OFF:0x1806e
@SPK:
@JPN:　血を見て興奮したのだろうか、副院長の瞳が潤んで　いる。
@ENG:

@IDX:22928
@OFF:0x180b4
@SPK:
@JPN:　血を含んだ布地を熱心についばみ、唾液をまぶして　吸飲する。
@ENG:

@IDX:22929
@OFF:0x180fe
@SPK:
@JPN:　時折布地と一緒についばまれる皮膚から、気が遠く　なるほどの快感が背筋を駆け上る。
@ENG:

@IDX:22931
@OFF:0x181a7
@SPK:［千草］
@JPN:　んふっ、んっ……チュゥ……んくっ、んくっ……。
@ENG:

@IDX:22934
@OFF:0x1820d
@SPK:[\protag]
@JPN:　も、もう充分です……あとで洗いますから……。
@ENG:

@IDX:22936
@OFF:0x1827e
@SPK:［千草］
@JPN:　んっ、んんっ……ふぅ、あとじゃ遅いわ。今の内にできるだけ落としておかなくちゃ……。
@ENG:

@IDX:22939
@OFF:0x18308
@SPK:[\protag]
@JPN:　で、ですが……。
@ENG:

@IDX:22941
@OFF:0x1835d
@SPK:［千草］
@JPN:　ああ、ここのことね。確かにこのままじゃ、蛇の生殺しだわ。ごめんなさい、気がつかなくって……。
@ENG:

@IDX:22944
@OFF:0x183f1
@SPK:[\protag]
@JPN:　いや、そうじゃなくて……。
@ENG:

@IDX:22946
@OFF:0x18450
@SPK:［千草］
@JPN:　でも、口は塞がってるし……手でもいいかしら？
@ENG:

@IDX:22949
@OFF:0x184b4
@SPK:[\protag]
@JPN:　……え？　あっ！
@ENG:

@IDX:22951
@OFF:0x185c5
@SPK:［千草］
@JPN:　すごい……こんなにカチカチになってる……これじゃ、つらいはずだわ。
@ENG:

@IDX:22954
@OFF:0x1863f
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、あの……。
@ENG:

@IDX:22956
@OFF:0x18692
@SPK:［千草］
@JPN:　大丈夫……心配しなくても、このままにはしないわ……いいえ勿体なくてそんなことできない……。
@ENG:

@IDX:22959
@OFF:0x18724
@SPK:[\protag]
@JPN:　うっく……あっ、はぅ……。
@ENG:

@IDX:22961
@OFF:0x18783
@SPK:［千草］
@JPN:　……どう？　私の手、気持ちいい？
@ENG:

@IDX:22964
@OFF:0x187db
@SPK:[\protag]
@JPN:　す、すごい……気持ちい……です……。
@ENG:

@IDX:22966
@OFF:0x18844
@SPK:［千草］
@JPN:　嬉しいわ……じゃ、このまま続けるわね……。
@ENG:

@IDX:22967
@OFF:0x188a0
@SPK:
@JPN:　信じられない……。
@ENG:

@IDX:22968
@OFF:0x188c2
@SPK:
@JPN:　副院長はただ手で擦ってるだけなのに、驚くほどの　快感が肉棒を包み込む。
@ENG:

@IDX:22969
@OFF:0x18918
@SPK:
@JPN:　これと比べたら、自慰などはほんの子供の戯れ事に　過ぎない。
@ENG:

@IDX:22970
@OFF:0x18962
@SPK:
@JPN:　手でこれほど気持ちいいなら、セックスなどしたら　どうなってしまうのか……。
@ENG:

@IDX:22972
@OFF:0x18a05
@SPK:［千草］
@JPN:　クチュ、クチュ……ジュルッ……フフフ、可愛い顔……ここもヒクヒクしてる……。
@ENG:

@IDX:22975
@OFF:0x18a89
@SPK:[\protag]
@JPN:　ウク……アッ、ハッ……。
@ENG:

@IDX:22977
@OFF:0x18ae6
@SPK:［千草］
@JPN:　気持ちいいの？　感じてるの？　じゃあ……こんなのはどう？
@ENG:

@IDX:22980
@OFF:0x18b56
@SPK:[\protag]
@JPN:　うあっ……あぁっ！
@ENG:

@IDX:22982
@OFF:0x18bad
@SPK:［千草］
@JPN:　いいわ、あなたの反応……下手に経験を積んだ男より、ずっとダイレクトに返ってくる……ウフフ、いろんなコトを試してみたくなっちゃう……。
@ENG:

@IDX:22985
@OFF:0x18c69
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、あうっ……あっ……。
@ENG:

@IDX:22987
@OFF:0x18cc6
@SPK:［千草］
@JPN:　感じるわよ……あなた、もうすぐイキそうなんでしょ？　……いいのよ、イッても……。
@ENG:

@IDX:22990
@OFF:0x18d4e
@SPK:[\protag]
@JPN:　クッ……イク、なら……せ、せめて……。
@ENG:

@IDX:22992
@OFF:0x18db9
@SPK:［千草］
@JPN:　なに？　もっと責めて欲しいの？　……じゃあ、これでどう？
@ENG:

@IDX:22995
@OFF:0x18e29
@SPK:[\protag]
@JPN:　ち、ちが……くぁ！　あぁ！
@ENG:

@IDX:22996
@OFF:0x18e77
@SPK:
@JPN:　イクなら、せめて口で……そんな言葉は、副院長の　手から生まれる快感でかき消された。
@ENG:

@IDX:22997
@OFF:0x18ed9
@SPK:
@JPN:　同時に、副院長の責めが激しさを増す。
@ENG:

@IDX:22998
@OFF:0x18f0d
@SPK:
@JPN:　亀頭の括れを引っ掻くように擦られ、痛みを伴った　快感が全身を駆け巡る。
@ENG:

@IDX:23000
@OFF:0x18fac
@SPK:［千草］
@JPN:　これでもまだ足りないの？　お汁はいっぱい出てるのに、まだ我慢するつもり？
@ENG:

@IDX:23003
@OFF:0x1902c
@SPK:[\protag]
@JPN:　あうっ……あっ、くうっ……。
@ENG:

@IDX:23005
@OFF:0x1908d
@SPK:［千草］
@JPN:　ねえ、我慢なんかしないでちょうだい……あなたのペニスからザーメンが噴き出すところ、早く見せて……。
@ENG:

@IDX:23008
@OFF:0x19127
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、あ、あ……ダメ……も、出る……。
@ENG:

@IDX:23010
@OFF:0x19190
@SPK:［千草］
@JPN:　ああ……イクの？　ザーメン出ちゃうの？　いいわ、いっぱい……いっぱい出して……。
@ENG:

@IDX:23013
@OFF:0x19218
@SPK:[\protag]
@JPN:　くぅ……あ、ああぁ！
@ENG:

@IDX:23016
@OFF:0x19349
@SPK:[\protag]
@JPN:　はあ、はあ、はあ、はあ……。
@ENG:

@IDX:23018
@OFF:0x193aa
@SPK:［千草］
@JPN:　ウフフ……すごいわ、ずいぶん溜まってたみたいね？　黄色く濁ったザーメン、こんなにいっぱい噴き出しちゃって……。
@ENG:

@IDX:23021
@OFF:0x19450
@SPK:[\protag]
@JPN:　す、すみません……顔なんかにかけてしまって……。
@ENG:

@IDX:23023
@OFF:0x194c5
@SPK:［千草］
@JPN:　いいのよ。気にしないで。
@ENG:

@IDX:23026
@OFF:0x19515
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも……。
@ENG:

@IDX:23028
@OFF:0x19564
@SPK:［千草］
@JPN:　あなた男の子でしょ？　これくらいのことで落ち込まないの。女に精液をかけたんだから『これでこいつは俺のモノだ』くらいのことは考えなきゃダメよ。
@ENG:

@IDX:23031
@OFF:0x19628
@SPK:[\protag]
@JPN:　そ、そんな風に思えませんよ……情けなくって。
@ENG:

@IDX:23033
@OFF:0x19699
@SPK:［千草］
@JPN:　ひょっとして、手でイッちゃったから？
@ENG:

@IDX:23036
@OFF:0x196f5
@SPK:[\protag]
@JPN:　……そうです。
@ENG:

@IDX:23038
@OFF:0x19748
@SPK:［千草］
@JPN:　バカね……これはこれでいいのよ。それとも、初めてが手じゃやっぱり物足りない？
@ENG:

@IDX:23041
@OFF:0x197cc
@SPK:[\protag]
@JPN:　！？　なんで知ってるんですか！？
@ENG:

@IDX:23043
@OFF:0x19831
@SPK:［千草］
@JPN:　そんなの、見てれば分かるわ。
@ENG:

@IDX:23044
@OFF:0x19881
@SPK:
@JPN:　……情けない……。
@ENG:

@IDX:23045
@OFF:0x198a3
@SPK:
@JPN:　手でイカされただけじゃなく、僕が童貞ということ　まで見破られていたなんて……。
@ENG:

@IDX:23046
@OFF:0x19901
@SPK:
@JPN:　恥ずかしくて、このまま消えてしまいたい。
@ENG:

@IDX:23048
@OFF:0x19a8f
@SPK:［千草］
@JPN:　……で、続きはどうする？
@ENG:

@IDX:23051
@OFF:0x19adf
@SPK:[\protag]
@JPN:　続きって、そんなこと……僕、今イッたばかりで……。
@ENG:

@IDX:23053
@OFF:0x19b56
@SPK:［千草］
@JPN:　ヤダ、勘違いしてる？　……そうじゃなくて健康診断の続きをどうするかって聞いたの。採血はもうやめにするとしても、まだ色々残ってるわ。
@ENG:

@IDX:23056
@OFF:0x19c10
@SPK:[\protag]
@JPN:　えっ？　あ、そ、そうですよね。
@ENG:

@IDX:23058
@OFF:0x19c73
@SPK:［千草］
@JPN:　私はさっきので大体分かったから必要ないと思うけど……一応ちゃんとした問診もする？
@ENG:

@IDX:23061
@OFF:0x19cfb
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　さっきのって……？
@ENG:

@IDX:23063
@OFF:0x19dce
@SPK:［千草］
@JPN:　フフフ、あなたのいろんな反応よ……。
@ENG:

@IDX:23066
@OFF:0x19e2a
@SPK:[\protag]
@JPN:　反応？
@ENG:

@IDX:23068
@OFF:0x19e75
@SPK:［千草］
@JPN:　握られた時にどんな声を出すのかとか、イク時にはどんな顔をするのかとか……。
@ENG:

@IDX:23071
@OFF:0x19ef7
@SPK:[\protag]
@JPN:　そ、それで何が分かるんですか？
@ENG:

@IDX:23073
@OFF:0x19f5a
@SPK:［千草］
@JPN:　あら？　色々と分かるわよ？　その人が女性慣れしてるかどうかとか、前の日にオナニーしたのかどうかとか……。
@ENG:

@IDX:23076
@OFF:0x19ffa
@SPK:[\protag]
@JPN:　それって、健康診断と関係ないじゃないですか！
@ENG:

@IDX:23078
@OFF:0x1a0e1
@SPK:［千草］
@JPN:　あら、ぜんぜん関係ないこともないわよ？　その人の精神状態なんかは、セックスしたら如実に現れるもの。
@ENG:

@IDX:23081
@OFF:0x1a17b
@SPK:[\protag]
@JPN:　で、でもさっきのはセックスじゃ……。
@ENG:

@IDX:23083
@OFF:0x1a1e4
@SPK:［千草］
@JPN:　まあ、それもそうね。あなたが納得できないんなら、ちゃんと問診をしたほうがいいわね。
@ENG:

@IDX:23086
@OFF:0x1a26e
@SPK:[\protag]
@JPN:　……お願いします。
@ENG:

@IDX:23088
@OFF:0x1a2c5
@SPK:［千草］
@JPN:　リラックス……はさっきので充分してるわね。それじゃ問診を始めましょう。
@ENG:

@IDX:23091
@OFF:0x1a343
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。
@ENG:

@IDX:23092
@OFF:0x1a3cc
@SPK:
@JPN:　副院長の口ぶりから、残りは問診だけなのかと思っ　ていたが、それ以外にも色々な検査をされ、様々な　データを取られた。
@ENG:

@IDX:23093
@OFF:0x1a44e
@SPK:
@JPN:　全ての検査が済み、ようやく健康診断は終わろうと　している。
@ENG:

@IDX:23094
@OFF:0x1a498
@SPK:
@JPN:　あとは副院長から結果を聞くだけだ。
@ENG:

@IDX:23096
@OFF:0x1a5cc
@SPK:［千草］
@JPN:　……さてと、これでカルテの記入も終わったし……もう帰っていいわよ。
@ENG:

@IDX:23099
@OFF:0x1a646
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　あ、あの……診断の結果は……？
@ENG:

@IDX:23101
@OFF:0x1a6af
@SPK:［千草］
@JPN:　ああ、そう言えば言ってなかったわね……そうね、今のところ問題はないわ。ただし血液検査ができなかったから、私の所見でしかないけど……。
@ENG:

@IDX:23104
@OFF:0x1a76b
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　でも他にも色々検査されましたけど……。
@ENG:

@IDX:23106
@OFF:0x1a7dc
@SPK:［千草］
@JPN:　ああ、あれはあなたの基本的なデータを取るためのものなの。健康診断自体とはあまり関係がないわ。
@ENG:

@IDX:23109
@OFF:0x1a870
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？　そうなんですか？
@ENG:

@IDX:23111
@OFF:0x1a8cb
@SPK:［千草］
@JPN:　ええ。だから次の健康診断からは、これほど手間はかからないはずよ。
@ENG:

@IDX:23114
@OFF:0x1a943
@SPK:[\protag]
@JPN:　……はあ。
@ENG:

@IDX:23116
@OFF:0x1a992
@SPK:［千草］
@JPN:　なあに？　不満そうね。なんだったら検査課まで行って、さっきのデータももらってくるけど……どうする？
@ENG:

@IDX:23119
@OFF:0x1aa2c
@SPK:[\protag]
@JPN:　い、いえ、副院長の所見だけで結構です。信じてますから。
@ENG:

@IDX:23121
@OFF:0x1aaa7
@SPK:［千草］
@JPN:　そう？　ありがと……じゃあ、早く帰りなさい。
@ENG:

@IDX:23122
@OFF:0x1ab17
@SPK:
@JPN:　そう言うと、副院長は机に向かってしまう。
@ENG:

@IDX:23123
@OFF:0x1ab4f
@SPK:
@JPN:　ここにいても、彼女の邪魔になるだけだ。
@ENG:

@IDX:23124
@OFF:0x1ab85
@SPK:
@JPN:　部屋に帰って休むとしようか……。
@ENG:

@IDX:23127
@OFF:0x1abf1
@SPK:[\protag]
@JPN:　それじゃあ、失礼します……。
@ENG:

@IDX:23128
@OFF:0x1ad05
@SPK:
@JPN:　夕方から始まった健康診断は、思ったよりも時間が　かかったようだ。
@ENG:

@IDX:23129
@OFF:0x1ad55
@SPK:
@JPN:　来た時にはまだ明るかったロビーも、今は常夜灯の　明かりだけになっている。
@ENG:

@IDX:23130
@OFF:0x1adad
@SPK:
@JPN:　冷房のせいか日が落ちたせいか……それとも、誰も　いないロビーの物寂しげな雰囲気がそう感じさせる　のか、心持ち肌寒さを覚えた。
@ENG:

@IDX:23131
@OFF:0x1ae50
@SPK:
@JPN:　あの仕事を始めてから臆病になったのだろうか？
@ENG:

@IDX:23132
@OFF:0x1ae8c
@SPK:
@JPN:　薄暗いロビーを怖がっていることもそうだが、健康　診断の時の醜態もそうだ。
@ENG:

@IDX:23133
@OFF:0x1aee4
@SPK:
@JPN:　注射を怖がるなんて、子供みたいじゃないか。
@ENG:

@IDX:23134
@OFF:0x1af1e
@SPK:
@JPN:　でも、注射なんてここ何年もされてなかったし……　仕方ないんじゃないか？
@ENG:

@IDX:23135
@OFF:0x1af74
@SPK:
@JPN:　……いや、この年で注射を怖がるなんて、やっぱり　おかしいか。
@ENG:

@IDX:23136
@OFF:0x1afce
@SPK:
@JPN:　……おかしいと言えば、いま思えばあれもちょっと　変だった。
@ENG:

@IDX:23137
@OFF:0x1b018
@SPK:
@JPN:　血を見た時の、副院長の目……。
@ENG:

@IDX:23138
@OFF:0x1b046
@SPK:
@JPN:　最初は血を見て貧血を起こしたのかとも思った。
@ENG:

@IDX:23139
@OFF:0x1b082
@SPK:
@JPN:　でも、それにしては目が輝いていた。
@ENG:

@IDX:23140
@OFF:0x1b0b4
@SPK:
@JPN:　怪談話ではないが、『吸血鬼』などという俗っぽい　迷信が脳裏をかすめる。
@ENG:

@IDX:23141
@OFF:0x1b11a
@SPK:
@JPN:　……我ながら馬鹿なことを考えているな。
@ENG:

@IDX:23142
@OFF:0x1b150
@SPK:
@JPN:　夏の怪談を思い出すなら、もっと風情のあるものが　あるだろうに……。
@ENG:

@IDX:23143
@OFF:0x1b1a2
@SPK:
@JPN:　『牡丹燈籠』とか『番町皿屋敷』とか……。
@ENG:

@IDX:23144
@OFF:0x1b1e8
@SPK:
@JPN:　その時、空調の冷気が背中に流れ込んできた。
@ENG:

@IDX:23145
@OFF:0x1b222
@SPK:
@JPN:　それは、ちょうど怪談のことを考えていた僕には、　とてもタイムリーに思えて、僕の苦笑を誘った。
@ENG:

@IDX:23146
@OFF:0x1b28e
@SPK:
@JPN:　怖い話をする時は、このくらいの薄ら寒さがあった　方がいい。
@ENG:

@IDX:23147
@OFF:0x1b2d8
@SPK:
@JPN:　演出に、お次は『ヒュ～ドロロ』かドライアイスが　欲しいところだな……。
@ENG:

@IDX:23148
@OFF:0x1b34e
@SPK:
@JPN:　……まあ、健康診断が長引いたのも無理はない。
@ENG:

@IDX:23149
@OFF:0x1b38a
@SPK:
@JPN:　僕は、これ以上ないぐらい『健康』であることを、　副院長に証明してしまった。
@ENG:

@IDX:23150
@OFF:0x1b3e4
@SPK:
@JPN:　健康診断としては上出来だ。
@ENG:

@IDX:23151
@OFF:0x1b40e
@SPK:
@JPN:　……などと言える余裕は、僕にはない。
@ENG:

@IDX:23152
@OFF:0x1b450
@SPK:
@JPN:　どうしてあんな展開になってしまったのか……。
@ENG:

@IDX:23153
@OFF:0x1b48c
@SPK:
@JPN:　シチュエーションだけ見たら、安っぽい官能小説か　ＡＶのようだ。
@ENG:

@IDX:23154
@OFF:0x1b4da
@SPK:
@JPN:　美人女医に弄ばれ、虜とされる若い男性患者。
@ENG:

@IDX:23155
@OFF:0x1b514
@SPK:
@JPN:　虚構の中のお話としての好みは別として、現実に、　しかも、我が身がそんなことになるとは、露ほども　思わなかった。
@ENG:

@IDX:23156
@OFF:0x1b5a2
@SPK:
@JPN:　……正直なところを言えば、気持ち良かった。
@ENG:

@IDX:23157
@OFF:0x1b5dc
@SPK:
@JPN:　まさに夢のような出来事だった。
@ENG:

@IDX:23158
@OFF:0x1b60a
@SPK:
@JPN:　ただ、本当に夢なら……その、何と言うか、醒めて　欲しい類の夢だ。
@ENG:

@IDX:23159
@OFF:0x1b66a
@SPK:
@JPN:　もちろん、副院長と性的な交渉を持ったことには、　不満は全くない。
@ENG:

@IDX:23160
@OFF:0x1b6ba
@SPK:
@JPN:　不満はないが……恥ずかしかった。
@ENG:

@IDX:23161
@OFF:0x1b6ea
@SPK:
@JPN:　普通のセックスで、或いはフェラチオされて達する　ならまだしも、手でイッてしまうなんて……。
@ENG:

@IDX:23162
@OFF:0x1b764
@SPK:
@JPN:　今日の僕は、完全に三枚目だ……。
@ENG:

@IDX:23163
@OFF:0x1b794
@SPK:
@JPN:　注射を子供みたいに痛がるわ、挙げ句の果てに、手　だけでイッてしまうわ……。
@ENG:

@IDX:23164
@OFF:0x1b7ee
@SPK:
@JPN:　恥ずかしくてしばらく副院長の顔をまともに見られ　そうにない。
@ENG:

@IDX:23165
@OFF:0x1b84a
@SPK:
@JPN:　身体も顔も、まだ火照っている。
@ENG:

@IDX:23166
@OFF:0x1b878
@SPK:
@JPN:　病院にしては効き過ぎた空調の冷気が、ひんやりと　心地良い。
@ENG:

@IDX:23167
@OFF:0x1b8c2
@SPK:
@JPN:　背中に伝わる汗が冷やされて、急速に体温を下げて　ゆく。
@ENG:

@IDX:23168
@OFF:0x1b91a
@SPK:
@JPN:　……心地良いけど、このままでは風邪を引くな。
@ENG:

@IDX:23169
@OFF:0x1b956
@SPK:
@JPN:　身震いするほどの寒さを感じて、思わず苦笑した。　
@ENG:

@IDX:23170
@OFF:0x1b9aa
@SPK:
@JPN:　……寒い？
@ENG:

@IDX:23171
@OFF:0x1b9d6
@SPK:
@JPN:　そう言えば僕は、ジャケットを着てきたはずだ。
@ENG:

@IDX:23172
@OFF:0x1ba12
@SPK:
@JPN:　だが今は、そんなものは羽織っていない。
@ENG:

@IDX:23173
@OFF:0x1ba48
@SPK:
@JPN:　……たぶん、いや、確実に診察室に忘れてきた。
@ENG:

@IDX:23174
@OFF:0x1ba94
@SPK:
@JPN:　夏なのだから、是が非でも必要なものでもないが、　あれでも僕の数少ない外出着だ。
@ENG:

@IDX:23175
@OFF:0x1baf2
@SPK:
@JPN:　少々くたびれたジャケットだから、『忘れ物』扱い　で事務局に取りに行くのも、ちょっと恥ずかしい。　
@ENG:

@IDX:23176
@OFF:0x1bb74
@SPK:
@JPN:　まだ診察室には、副院長が残っているはずだ。
@ENG:

@IDX:23177
@OFF:0x1bbae
@SPK:
@JPN:　今なら、急げば間に合うかもしれない。
@ENG:

@IDX:23178
@OFF:0x1bbe2
@SPK:
@JPN:　まだ残っててくれるといいが……。
@ENG:

@IDX:23179
@OFF:0x1bcd4
@SPK:
@JPN:　……どうやら間に合ったようだ。
@ENG:

@IDX:23180
@OFF:0x1bd02
@SPK:
@JPN:　副院長は中にいるのか、診察室に人の気配がある。　
@ENG:

@IDX:23181
@OFF:0x1bd52
@SPK:
@JPN:　だが……この音は？
@ENG:

@IDX:23182
@OFF:0x1bd74
@SPK:
@JPN:　ドア越しに聞こえてくる水の音……。
@ENG:

@IDX:23183
@OFF:0x1bda6
@SPK:
@JPN:　蛇口を限界に開けているのか、洗面台を叩く水音が　大きく響いてくる。
@ENG:

@IDX:23184
@OFF:0x1bdf8
@SPK:
@JPN:　……一体、何をしているんだ？
@ENG:

@IDX:23185
@OFF:0x1bf2a
@SPK:
@JPN:　ドアを薄く開けて、そっと顔を覗かせる。
@ENG:

@IDX:23186
@OFF:0x1bf60
@SPK:
@JPN:　……室内では、副院長が手を洗っていた。
@ENG:

@IDX:23187
@OFF:0x1bf96
@SPK:
@JPN:　両手を泡だらけにして、熱心に手を擦っている。
@ENG:

@IDX:23188
@OFF:0x1bfe8
@SPK:
@JPN:　だが、どこかが違う……。
@ENG:

@IDX:23189
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@SPK:
@JPN:　ただ手を洗っているだけなのに、感じられる奇妙な　違和感。
@ENG:

@IDX:23190
@OFF:0x1c058
@SPK:
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:23191
@OFF:0x1c072
@SPK:
@JPN:　なぜ床が水浸しなんだ？
@ENG:

@IDX:23192
@OFF:0x1c098
@SPK:
@JPN:　それに白衣にまで泡が飛び散って、所々水玉模様が　できている。
@ENG:

@IDX:23193
@OFF:0x1c0f4
@SPK:
@JPN:　僕が覗いていることに気がついてないのか、副院長　は執拗とも思える動きで手を擦り合わせている。
@ENG:

@IDX:23194
@OFF:0x1c160
@SPK:
@JPN:　髪を振り乱し、泡を飛び散らせ……。
@ENG:

@IDX:23195
@OFF:0x1c192
@SPK:
@JPN:　そうして泡立てた手を水で流し、再び石鹸をつけて　擦る。
@ENG:

@IDX:23196
@OFF:0x1c1f3
@SPK:
@JPN:　血がついたからだろうか？
@ENG:

@IDX:23197
@OFF:0x1c21b
@SPK:
@JPN:　医療現場での手洗いの励行は、医師である副院長に　とっては至極当然のことだろう。
@ENG:

@IDX:23198
@OFF:0x1c279
@SPK:
@JPN:　それでなくとも、院内感染など病院の不祥事が色々　と騒がれる世の中だ。
@ENG:

@IDX:23199
@OFF:0x1c2ed
@SPK:
@JPN:　……あんなことをしたのだから、手を洗いたくなる　気持ちは分からないでもない。
@ENG:

@IDX:23200
@OFF:0x1c349
@SPK:
@JPN:　確かに、精液も手にかかってしまった。
@ENG:

@IDX:23201
@OFF:0x1c37d
@SPK:
@JPN:　副院長は気にしてないと言ってたが、あんなモノが　ついたら気持ち悪いに違いない。
@ENG:

@IDX:23202
@OFF:0x1c3e9
@SPK:
@JPN:　それに副院長は、採血時の失敗で、直に血液に接触　してしまった。
@ENG:

@IDX:23203
@OFF:0x1c437
@SPK:
@JPN:　医療現場での手洗いの励行は、医師である副院長に　とっては至極当然のことだろう。
@ENG:

@IDX:23204
@OFF:0x1c495
@SPK:
@JPN:　それでなくとも、院内感染など病院の不祥事が色々　と騒がれる世の中だ。
@ENG:

@IDX:23205
@OFF:0x1c4f9
@SPK:
@JPN:　だが眼前の光景は、そんな世俗的な範疇で語るには　いささか度を越している。
@ENG:

@IDX:23206
@OFF:0x1c551
@SPK:
@JPN:　白衣どころか、その下に着ている服が濡れるのにも　構わず、ただひたすらに手を洗い続けている。
@ENG:

@IDX:23207
@OFF:0x1c5cd
@SPK:
@JPN:　石鹸をつけ直しては、繰り返し……。
@ENG:

@IDX:23211
@OFF:0x1c667
@SPK:　何度も……
@JPN:何度も……。
@ENG:

@IDX:23212
@OFF:0x1c681
@SPK:
@JPN:　それこそ、偏執狂かと思わせるほどに……。
@ENG:

@IDX:23213
@OFF:0x1c6c7
@SPK:
@JPN:　背筋に悪寒が走る。
@ENG:

@IDX:23214
@OFF:0x1c6e9
@SPK:
@JPN:　空調の冷気のせいにはできない。
@ENG:

@IDX:23215
@OFF:0x1c717
@SPK:
@JPN:　見てはいけないものを見てしまったような、そんな　怖気にも似た感覚。
@ENG:

@IDX:23216
@OFF:0x1c769
@SPK:
@JPN:　常識など通用しない、狂気の世界を覗いてしまった　ような気がする。
@ENG:

@IDX:23217
@OFF:0x1c883
@SPK:
@JPN:　すぐ側にあった脱衣籠を隙間から引き寄せ、開けた　時よりも慎重にドアを閉める。
@ENG:

@IDX:23218
@OFF:0x1c8df
@SPK:
@JPN:　そのまま踵を返すと、音を立てないように部屋へと　逃げ帰った……。
@ENG:

@IDX:23219
@OFF:0x1ca07
@SPK:
@JPN:　部屋に帰っても、なかなか寝つけない。
@ENG:

@IDX:23220
@OFF:0x1ca3b
@SPK:
@JPN:　診察室で見た光景のせいで神経が高ぶっている。
@ENG:

@IDX:23221
@OFF:0x1ca87
@SPK:
@JPN:　あれは何だ？
@ENG:

@IDX:23222
@OFF:0x1caa3
@SPK:
@JPN:　いつもは冷静な副院長が、髪を振り乱しながら手を　洗う……。
@ENG:

@IDX:23223
@OFF:0x1caed
@SPK:
@JPN:　今思い出しても、掌にじっとりとした汗が滲み出て　くる。
@ENG:

@IDX:23224
@OFF:0x1cb43
@SPK:
@JPN:　……見なかったことにしよう。
@ENG:

@IDX:23225
@OFF:0x1cb6f
@SPK:
@JPN:　変な噂が立っては、副院長に申し訳ない……だから　僕一人の胸にしまって忘れてしまおう。
@ENG:

@IDX:23226
@OFF:0x1cbd3
@SPK:
@JPN:　それが、お互いのためだ。
@ENG:

@IDX:23227
@OFF:0x1cc0d
@SPK:
@JPN:　今日もまた明かりを点けたまま布団に横になる。
@ENG:

@IDX:23228
@OFF:0x1cc49
@SPK:
@JPN:　そうして枕に頭を埋め、ゆっくり目を閉じた……。　
@ENG:

